ブルースター
僕は、あの日彼女に殺されかけたのだ。
その日は、特別暑くも寒くもなくこの先の未来にある「イベント」のための日。
わかりやすく言えば 、ボスステージにいる雑魚キャラのような日だと思っていた.......
彼女の名は由香里といい、中学3年生のとき始めて一緒のクラスなった。
彼女の「その時」の第一印象は少し地味な印象を受けた。
僕のいる学校ではスクールカーストなんてものは存在しないほどみんな仲良く和気あいあいとしていが、もしそれがあるとすれば彼女は中の下だろうと........最初は思っていた。
その日は、美術の授業でピカソの「泣く女」模写をすることになった。
僕は美術が好きなので、画用紙の上で筆を意気揚々と踊らせていた。そこでふと気が付いたのは由香里が一個席を挟んで座っていた事だ。
僕の隣は不登校の子だったので空席だったのだ。つまり実質、由香里と隣なわけだ。
だからといって興奮したり、心の中で神さまに感謝の舞を踊ったりしなかった......その時まで。
休み時間、外から心地の良い風が僕の体を優しく包み込んでいた。
僕は、仲のいい友達、複数人と駄弁っていた。
「昼、購買いくー?」
「私はいかないかなぁー」
僕は、会話に耳を傾けながら自分の眼を窓に向けた。
その日は実にいい天気だった。まるでブルースターを空一面に敷き詰めたようだった。そして元気な日輪からは鋭くも優しい陽光が窓を通して僕を突き刺していた。
ふと、僕は眼中に彼女を入れた。その瞬間僕は彼女に見惚れてしまった。
彼女は実に美しかった。鋭いはずの陽光が彼女を優しく包んでいた。そして、彼女は自分の絵に満足したのか、絵を見ながらニコニコしていた。
「龍太、お前はどうするの?」
友達の圭太が僕に聞いてきたが、僕は呆気に取られてて耳が声を受け付けなかった。
「おーい、龍太聞いてる?」
僕はハッとしてしどろもどろになりながら
「あ、うん」
と、適当に返事をした。僕はそれどころじゃなかったのだ。また視界を彼女の方に向けた瞬間に僕の背中から腰にかけて汗が流れてるのを感じた。
彼女と目が合ってしまったのだ。