始動
大きな大陸の中心にある森に囲まれた国。そこで私は生まれた。
大陸の名前は、それを見つけたガーネッシュ・ブリアンという人物に由来して、ガーネット大陸と呼ばれ、またの名を、紅玉大陸などとも言った。
国の名前は森に囲まれているからフォレストニア王国。大陸名といい国名といい、少々安直すぎやしないだろうか、なんて思うけどそれは話してても仕方ない。
その緑の国の中心、白が基調とされた王城で、私は生を受けた。
父はフォレストニアの18代国王。凛々しく、誰もが彼を崇め敬った。
そんな王の妃となった母は、ある王国の姫……などということはなく、なんと、大陸の外、はるか東の方にある国からやってきた、旅の商人の娘だったらしい。
商人の妻、つまりは母の母に当たる人物は、母が幼い頃には姿を消していた為、どんな人なのかも分からないそうで。
そんな母を妃とすることに異論を上げる者は多くいたらしいが、最後は父が納得させたらしい。……どうやったかは知らないが。
とにかく、異国の血を継ぐ母を持つ私は、この国のほとんどの者が持つ色を持たず、母によく似た白銀の髪を持って生まれて来た。
王女ともあろう者がそんな色を持って生まれるはずがないだとか、母の不義の子だとか。
多くの罵詈雑言を聞いてきたけれど、結局は王族しか持たない紅玉の瞳に、みな口を閉ざした。
そして、私は国の王女として認められ、背を伸ばして生きてきた。
20歳を迎えるまでは。