3転生者①
うげばぁあああ!!
踏まれた蛙のような断末魔で目覚めた。
いや、断末魔すら出なかった。
体が動かない。え、俺の体は大丈夫なのか。
高校での試験が終わり、スキップをしながら
赤点つれー。でも、勉強したって言い訳すりゃいいか
ジャンプ買って帰ろうっと、友達と帰宅道で分かれた後、記憶がない。
というか、体が動かない。こえー
目を開けても、視界零の真っ暗。
何も見えない。鈍痛が体をバシバシ叩いてくる。
嘘だろ。勘弁してくれよ……
へいよー。
おお、神よ助けたまえ。
現実逃避してる場合じゃない。
なんだこれは。助けてくれよー
へいよー。
体を動かそうとする度に、鈍痛がビシビシと鞭打ってくる
痛い。体は動かないわ、目は見えないわ。バットエンド?
痛みだけあるとか、酷すぎる状況で泣けてくる
待てよ。痛みがあるという事は五感はあるのか。
最悪の最悪、腕がとれて、足がとれて。
おまけに目もとれて、芋虫の可能性がある。
どこの戦場に行った帰還兵だ。勘弁してくれ。
ネズミに齧られて、身悶えしながら看護師を呼べないEND
へいよー。間違いなく発狂する。絶対やだ。
ゴスッ!
ごほぉ!?
腹、多分、腹と思われる箇所に凄まじい衝撃が走る。
え、どうした。明らかに殴られたような痛みだぞ。
ん? 視界がぼんやりと明るくなってきた。
ゴスッ!ゴスッ!ゴスッ!ゴスッ!ゴスッ!
いでぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”!
悶絶して体を丸める事もできない。体を押さえ付けられて、腹パンを連打されてる
いや、死ぬ。死にそう。感覚がなくて、意識だけあって殴られるとか。
どこの拷問だ。涙が流れて来た。くそっ、親父にもぶれた事ないのに!
ドゴォ!!
一際、力強い一撃で内蔵が口から出そうになる。
同時に視界が開かれる。おお、光りあれ!
見渡す限り、何処までも続く青い空。
青い草原が延々と広がり、ボロボロの焼けこげた服に。
隣で必死の形相で拳を振り上げる老人。
「おお、おお!!起きたかぁ!」
「死んだと思ったぞ…………レイ」
げほっ、全身が痺れてビリビリする。
手足は強張って動かないし、まるで見た事のない服。
不健康な腕ではなく、子供特有の細い腕。
そして、爺の呼び声。
…………おう。夢か。
寝よう。眼を瞑って、起きるのを待つ。
いや、ユニークな夢でしたね。
「ああ……死ぬな!死ぬな、レイ!」
ドゴボォ!!
老人の振り下ろした拳で覚醒する。
死人でも起きるわ、こんなもの。
おい。
嘘だろ、神様。
遠くから走ってくる少女、嘶く馬。
空を飛ぶ巨大な鳥の群れ、そして、泣いて無事を祝う爺。
ゲームや漫画のフィクションの世界が
今の目の前に飛び出して来た。
それも、見ず知らずの子供に転生して。
「なんじゃこりゃああああああああああああああああ」
異世界での、初めての言葉は絶叫だった。