着信
幼馴染の久遠アリサ姉の父、久遠譲二の仕事場にて保護を受け数時間が経過した頃。
私の携帯に一通の着信が入った。
私は携帯の画面を見ると知らない番号からの着信に怪訝な表情を浮かべる。
さっそく電話に出て応対するとハスキーな男の声で「君なのか?」と聞こえた。
すぐにそれが誰かわかった。
「零時?」
『君のようだな』
ほっとする息使いが耳に伝わる。
電話の向こうで彼の安心感まで伝わってきた。
「大丈夫なの? 平気?」
『ああ、今は何とか無事だ。君が置いてくれたメモしっかりと受け取った』
「うん、わかってる。そうじゃなきゃ連絡してないよね」
『それでなのだが、単刀直入に聞く、君は味方か?』
「味方。零時は私の幼馴染。だから、何処にいるのか教えて。迎えに行く」
『そ、それは……』
彼がためらうように口ごもった。
やはり、まだこちらを疑っている。
「私はあなたの敵じゃない。私はあなたを知ってる。加賀零時。私の幼馴染」
『おさななじみ……それはどういう存在かは忘れたが君が俺の味方であるのは理解した。けれど、俺は何者かに狙われてる上にどうやってこの場所に来たのかさえ分からない。そんな今の俺と一緒にいれば迷惑をかける』
零時であろう謎の青年は遠慮がちに自分の今ある状況を説明した。
今の零時であるかはわからないけれども、零時に似た彼は記憶を失ってるのが確信した。
何よりもこの場所にどうやってきたのかさえ分からないということや自分が何者かに狙われてるという言い回しはまさに結論から言ってそうだと言える。
その説明で彼は必死に訴えてるのがわかった。言葉の上では距離を置こうとしていても心の中では――。
「だったら、何で電話をかけたの?」
『それは置かれたメモに連絡をと書かれていたからだ』
「こうなることはわかっていたはず。迎えに行くといわれることを」
『…………』
彼は答えない。
その沈黙は肯定の意志だと確信をもった。
「場所教えて。助ける。今私は警察関係者だと思う要人に保護を受けてる。だから、あなたの身の安全も保障できる」
『けいさつ? 例の青い服の奴らか。そうか。だが、その人物たちは俺も捕縛する気だったぞ』
「それは状況をうまく理解していなかったから。零時のこと説明したから大丈夫。だから、安心して迎えに行かせて」
懸命に訴えた。私の願いを。
『……わかった』
彼が折れ、今いる場所の地名を教えてくれた。
私の家から大分離れた場所だった。
だが、ココからならば電車を使えばそれなりに近い。
『敵に見つかる可能性もあるから早めに頼む。もしかしたら移動をするかもしれない』
「わかった。でも、逐次連絡を頂戴』
『なるべく、努力する。では、切るぞ』
通話を切ると私は隣に座り、こちらの話に耳を傾けていたアリサ姉と目があった。
「今のレイジくんですよね?」
「うん、零時新都市側の有楽町駅にいるみたい」
「じゃあ、新有楽町駅ですね」
「うん」
「でしたら、迎えに行きましょう」
アリサ姉はさっそく私たちが匿われてるこの劇場ホールの出入り口にいる警備の人に話をしていた。
すると、警備の人の溝に鋭い蹴りを入れて気絶させる。
「あ、アリサ姉!?」
「融通利かないんですから仕方ないです」
「融通って?」
「外に出たいから車を貸してほしいと言ったら私も同行しますだって。本当に嫌ですよね」
「で、でも警察の人が一人いたほうがいいんじゃない?」
「それはダメです」
「え?」
「どうにも不穏な感じがします。二人でここは行きましょう」
アリサ姉は何かを感じいるところがあるらしく強引にも二人での行動を推奨して来た。
私にはその考えが理解はできないが彼女の勘とは昔から損をしたことはなく得したことが多くある。
そう言った過去の経験からか彼女を信じた。
「わかった。アリサ姉が一人いれば安心できるからいいよ」
「では、まず武器を拝借してから迎えに行きましょう」
「え、ええ!?」
倒した警備員から銃を奪い取って「さぁ、早く」と彼女はせかした。
これでは保護をこちらから申し出ておいて失礼千万な行動だといえた。
「すみません」
私は倒れた警備員に謝り部屋を出て彼を迎えに行くために駅に向かった。