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記憶のない転生勇者  作者: ryuu
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過去と夢

 うっすらとうろ覚えの記憶。

 ココはいったいどこであったか。

 どこかの建造物。

 多くの人がそこで木材の物体――そう、名称は椅子だった。椅子に座り机に向かって必死こいて紙に書かれた羅列のようなものをみんなが同じ黒い恰好をして読み解いている。

 目の前には教官らしき男性の姿。

 俺の背後から誰かが声をかける。それは決していい感じのものではなく嫌な感じの声。


『おーい、根暗君今の問題わかりましたかぁ~?』

『ぎゃはは、万年落第のコミュ力ゼロの御神楽さんの金魚のフンにわかるわけねぇって』

『だよな』


 嘲笑う声と教師のしかりつける声。

 次第に教官もふっと笑いクラスが一緒になって声を上げ笑う。

 景色が変わる。

 先ほどとは違う。

 どこかの建物らしき場所の物陰で俺は先ほど嘲笑っていた3人組の男に殴られていた。

 なぜ殴るのだろうか?

 痛い。

 やめてくれ。

 ――しばらくして時間がたったのだろうか。

 男たちの姿はない。

 血にまみれた視界で映るのは綺麗な黒髪をした女。

 後頭部で髪を髪留めで結わえハーフアップにした端正な顔立ちのした美少女だった。

 彼女は俺を気遣うも俺はなぜだか彼女を遠ざけ逃げるようにどこかへ向かった。

 建物中に入って歩き進んで階段を上がって最上階へ。

 そこは風が吹きすさぶ金属製の鉄の様な網目、フェンスに囲まれた場所だ。

 そのフェンスを乗り越えた俺は彼女の足音が追い付く前にその場所から飛び降りた。


 ――――次も変わる景色。

 今度は自分の身なりはまた違う。

 黒の鋼鉄製のゴツイ衣装を着た姿。

 目の前には奇声をあげて剣を振るい戦う軍勢。

 それだけでも奇妙な光景であるが剣を持つ人種たちはバラツキがある。

 俺の仲間なのだろうらし気の男が俺に救援を要請する。

 俺は足早に動いて敵なのだろう黒の褐色肌をした耳の長い美少年を斬り付けた。

 それも平然と容赦なく。次から次へと襲いかかる敵に対して斬り殴り、右手から発光体のようなものを撃ちだして敵を殲滅している。

 こんなことをやめるんだ。

 そう言い聞かせても俺自身はやめない。

 これは夢なのであろうか。

 それとも忘れ去っている記憶なのか。

 映像がエラーを起こしたようにぶれ何度となく切り替わる。

 どこかの大きな部屋。俺は一人の純白のドレスを着た綺麗な美女と幾度と言葉を交わすと口づけを交わす。

 彼女は誰だ。

 その時だった。部屋に漆黒のドレスを着た女が入ってくると純白のドレスの彼女は絶望のにじませた表情で言う。

『逃げて。レイジさま。あなたの役目はもう終わりです』

 俺は拒否するように彼女の名前を呼ぶ。

 彼女の体を貫く黒の槍。

 俺は絶望の声を上げ手を伸ばすも彼女には届かない。足元で光る何か。

 次第に視界は白で埋め尽くされていき――


 ******


「うぁ」


 薄れた眼をゆっくりと持ち上げる。

 真っ先に見えるのは白色。体を何かが包み込むような柔らかい感触が伝わる。

 ゆっくりと体を起こして体に巻かれた包帯の存在に小首を傾げた。


「ここはいったい?」


 周囲を見ても見知らぬ場所で自分がいたあの大きなビルの建物の陰ではない。

 ここはそこから縁遠く離れた明るい感じの部屋。

 そう、誰かが住んでると思わせるような感じでいろんなものがあふれている。自分が眠っていたのはクッション材の敷き詰められた椅子。

 名称は確かソファだったか。

 先ほどからこの土地に関して何かを俺は知っているのだが思い出そうにも頭に激痛が走って阻害される。


「ん?」


 足先に人の気配を感じてみれば一人の女が寝息を立て眠っていた。

 黒髪に後頭部でハーフアップに結わえた美女。

 服装も清楚な感じの青い衣装。


「かのじょはいったいだれだ?」


 そんな言葉を独り言のように発すると彼女が身じろぎ目を覚ます。


「んっ」


 俺の膝から重みと人の体温が抜けた。

 続けて彼女は俺の目を見つめて瞬きを繰り返した。


「起きた! よかった」


 彼女は勢いよく俺に抱きついて嬉しさを表現する。

 なんだかそれは心地よい感覚と同時に気恥かしさのようなものを感じ取る。

 彼女の肌の柔らかさがそれを招いてるのだろう。


「すまないけどそれはよしてくれ。助けてくれたのは君か?」


 俺は彼女を突き放し周囲の状況と体の手当てを示唆して問いただす。

 彼女は頷きながら言う。


「えっと、まあ助けたっていうのは半分正解」

「半分?」

「そうだね。私、倒れてたあなたを見てここに運んだだけだから。治療したのは今寝室で眠ってる幼馴染のお姉さん」

「おさななじみ?」


 ふと、疑問がわく。

 幼馴染とはなんだっただろうか。

 それ以前に彼女の話てる言語を理解してしまえているし自分はここにきてからそうだが会話を成立させられるのか。

 いや、無意識化でその言葉を話してると言っていい。

 そう、生まれながらに知ってるかのような。

 でも、俺の生まれはここじゃない気がした。


「そう、幼馴染」


 彼女はこちらの言葉にどういう解釈をしたのか繰り返しうなづいた。


「聞かせて。あなたは何者?」

「君こそ何者だ? なぜ、俺を助けた」

「それは、あなたが私の知り合いに似てるから」

「知り合いに似ている?」


 またしても俺の知人を装う輩。

 俺にはいったい何人の知人がいるのであろうか。

 だが、彼女は先の奴らのように命を付け狙うわけではない様子。


「知り合い、私の幼馴染よ。古い友達」


 そう言った彼女の顔はどこか悲しげであり悔しさをにじませている。

 その顔は夢の記憶を想起させた。

 そうか、彼女の顔は夢の少女と――


「ねぇ、あなたは何者?」

「俺は――」


 そう、口から言葉を発しようとした時だった。

 この部屋の窓際、カーテンで閉め切った外の方から何やら気配を感じ取り俺は素早く彼女をかばうように背後に隠す。

 数秒後、室内へ爆風が舞い込んだ。

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