戦火 中編
記憶にある街とはずいぶんと変わっていた町が今は火の海にのまれて炭と化していく光景があった。
町の中からは喧噪や悲鳴が立ちどころに聞こえて歓楽街方面では多くの人たちが逃げ回ってる。
その火の海の中で火の海の元凶たる黒い軟体人間のような集団は逃げ伸びる人を追いかけて背中を伸びた腕をナイフに変化させ斬りつけて殺害していく。おぞましい光景だった。
即座に黒い軟体人間を蹴り飛ばし住民を逃げるように促す。
住民は遠くへ逃げても黒い軟体人間が地面から突如として新たに出現して増加していくので結局逃げ伸びた住民は殺されてしまう。
「くそがぁ!」
虚空より剣を出現させる。刀身が緑色で握りや柄の部分も煌びやかなエメラルドグリーンのロングブレード。
横合いに構えて一喝の叫びをあげて振りあげた。風の暴風が生まれて一直線に風の衝撃波が前方面をなぎ倒す。何体もの黒軟体人間が斬り刻まれて消滅する。
活路を生み出して疾走してあたりを見渡してルアンナを探した。
だが、彼女は見当たらない。
「くっ! 何処に居やがる」
突然、影が差し込み上を見上げると大柄の巨体が降ってくる。
後ろへ跳躍して回避をした。
おちてきたのはオオカミのような姿をした人だった。
「レイジ、やっとみつけた」
「っ! てめぇはバルサ・ミディック!?」
降ってきたのは追跡者としてアルバージャと組んでいた男、バルサ・ミディックだった。だが、彼はマンションで俺がこの手で殺害したとおもっていた。
「お前、死んだはずじゃあ……」
「ルアンナ様が復活させたんだ。てめlのことはしっかり覚えてる。傷が疼くぞ。このキズの罪を贖ってもらおう! 勇者レイジ!」
「ちっ! 結局こうなるか!」
話短く突貫攻撃を早速仕掛けるミディック。
横合いに回避したが彼はオオカミさながらに俊敏さと身軽な動きで突貫しながら追尾してくる。
「なっ!」
腕を掲げて半透明の防護魔法の構成となる結界を形成したがあまりの力強い衝撃に結界は破壊されて吹き飛ばされる。
火の海の広がる街の車道を転がり、炎上した車のフロントガラスに追突する。
「がはぁ!」
痛快な衝撃が背中から内部に伝わり甚大なダメージを痛感する。
血反吐を吐きながらゆっくりと身体を起き上がらせて握りしめていた剣を杖代わりに立ちあがった。
「剣で衝撃を和らげる……か」
「……一つ、言わせてもらうぞ」
「なんだ?」
「てめぇの同胞を殺したのは正当防衛だと知れ。勝手に人を殺しにきたんだ。そりゃぁ、殺さないとこっちが死んでた。それなのに恨まれちゃたまったもんじゃねぇ。恨むなら自分の主であるルアンナを恨め」
「貴様ぁ、反省をしていないのか……その身に刻ませよう……この痛みを!」
たちどころに目に見える彼の魔力のオーラが増幅していくのが。
ザッザッと後ろ脚に地面をけり助走をつけて突撃してくる。
闘牛のようなその仕草に俺は虚空からマントを生み出してそれを彼の額にかぶせた。
「うぐぁ!」
視界を遮られてのたうちまわる彼の頭部に渾身の一撃のかかと落としをくらわせてノックアウトさせた。
「わるいな。この件が終了したらあんたもクレルラルトスに一緒に帰してやるさ」
彼の巨大な両手足を虚空から生み出した魔封じの拘束具で縛り付けて路上に放置して駆けだす。
奥から大きな波動を感じ取った。
――大型デパートの前。その中から濃密な魔力の波動を感じ取れる。
ゆっくりと足を踏み出して自動ドアを通り抜けていく。
1階フロントエリアに悠然とした笑みをたたえて彼女は待っていた。
「やはり彼では足止めにすらなりませんねレイジさま。お待ちしていました」
彼女の周囲には薄気味の悪い黒煙が立ち上っていた。




