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幽霊でエルフの姉は魂約者  作者: 岩川ヒロヒロ
第一章 幽霊でエルフの姉は魂約者
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第020話(エピローグ) 【幽霊】 エルフの姉は魂約者?

 

 古城の奥深くの地下室に人間と亜人と幽霊の一団があった。

 在るべき者を在るべき場所へ帰す為の儀式をする為だ。


「フハハ、我は人の心に悪がある限りまたいつか必ず復活す……」


「うるせー! つべこべ言ってねーでさっさと入れ!」


 ロウがドラキュラ伯爵を棺桶に押し込め、フタを乱暴にバンと閉めた。

 その後にギードが厳重にガンガンと釘を打っていく。





「しかし、吸血鬼の貴族を一人で倒すとは……なかなかやるようになったな」

「流石です、にい様!」


 皆がオットーを誉めてくれる。

 しかし、本人の顔はあまり嬉しそうではなかった。


「いえ、ギード先生……勝てたのは僕一人の力ではないように思えるのです。

 先生が打ってくれたナイフや銃、ロウ師匠との修行があってこその勝利でしたし……。

 それに、戦いの最後に……エルザ姉さんを見た気がしました……」


「ブーーーーッッ!!!」


 オットーの言葉に全員が吹き出す。

 ガッとオットーの肩に手をかけて最初に切り出したのはロウ。


「何を!? 何をバカな事を言っているんだ! お前の姉貴は生きているに決まってるだろ!? 死んで幽霊になった上にお前に取り憑いているなんて訳ないじゃん!」


「ロウ師匠……嘘つく時に早口になるの止めた方がいいですよ……」


 その時、エルザの姿が足先からスゥーッと消え始める。

 もう余計な事は喋るなとばかりに、ギードがロウをオットーの前から蹴り飛ばす。


「オットー、よく聞け! お前の姉は死んでなどいない。必ず何処かで生きている。

 お前もそう信じているのだろう!?」

「そうよ、にい様!

 エルザ姉様はきっとどこかで幸せに暮らしています! 妹の私には解ります!」


 矢継ぎ早にギードとメルエがオットーの顔をのぞき込んで説得する。


「ロウやワシはともかく、メルエやボスがお前に嘘をついた事があったか? 大体、姉が死んでいるなんて、お前に嘘をついて誰が得をするんだ!? 無いだろ? そもそもお前が姉の生存を諦めてどうするんだ!? エルフと人間という種族は違えど姉として、将来の婚約者として、一緒に育ったんじゃないのか? 再び一緒に暮らせる日を望んで戦っているんじゃないのか? ワシらはお前の姉が生きていると、心から信じている。

 だからこうやってお前の力になりたいと思っている。

 そんなワシらが信じられないか? ワシはお前を信じている。

 だからお前を信じるワシを信じてくれ!」


 ギードがいつになく饒舌に、オットーの目を見て真剣に熱くまくしたてた。


「……わかりました、そうですねギード先生。

 僕が気弱になっていました。

 きっとエルザ姉さんは生きていますよね」


 オットーがスミマセンと、納得した表情で笑顔を見せる。


 ギードとメルエとロウが、チラッとエルザの方を確認すると。

 今まで透けて消えかけていた身体が再び現れ、元の姿に戻ってゆく。


「いやー、今のは危なかったわね……本気で昇天するかと思っちゃった」





 そう、オットーはまだ、エルザが死んでいる事を知らない。

 まさか自分に姉の幽霊が取り憑いているなんて思いもよらない事なのだ。


 ――オットー君は姉の私が、どこかでまだ生きていると強く信じている。

 ――弟の心の力で、私は現世に幽霊として残された。

 ――それがなくなれば、今のように消えてしまうだろう。

 ――けど……その為、皆に嘘をついて貰うのは心苦しい。

 ――何より、弟を騙すのは辛い。

 ――姿を見せてあげたい。

 ――声を聞かせてあげたい。


 エルザは申し訳なさで一杯になりながら、人間である為に幽霊を見る事も声を聞く事も出来ない自分の愛する弟の頭を後ろから強く抱きしめた。


 その悲しげな幽霊の姿が見える亜人の皆は自然と沈痛な表情になる。





「おめーのネーチャンおっぱいでけえなあ……」


 沈黙を破り、ついロウがポロッと口を滑らせてしまう。

 よく見るとオットーの頭を胸に抱いた事により、エルザの豊満な胸が圧迫されて強調される形になっている。


「えっ!? ロウ師匠、何でうちの姉さんが巨乳だったって知ってるんですか?」

「ええっ!? それは……だな……!」


「半年前の事件の時に姉さんの最後を看取ってくれたのは、やっぱりロウ師匠達だったんじゃないんですか!?」


『ビキッ!?』とロウの表情と身体が硬直する。

 誰の目からも明らかな動揺が見てとれる。


「知らん! 知らない! お前の姉貴なんて見た事ない!

 身長百七十センチ位のバスト89、ウェスト58、ヒップ90の巨乳金髪ロングの耳長エルフなんてお目にかかった事もない!!!」


 またもや、エルザの姿が足先からスゥーッと消え始める。

 ギードがロウを今度はギターケースから取り出した金属バットで殴り倒した。


 再びギードが力強くオットーの肩に手をかけ、真剣な顔で話始める。


「いいか、よく聞けオットー! ワシらが村に着いた時には、もうお前の姉はさらわれた後だった。

 だからロウもワシも、エルザなんて見た事はない。

 ロウがエルザを巨乳だと知っていたのは……そう、イメージだ。

 エルフは世間一般では胸が大きいイメージがある。

 世に出回っているエルフの絵もほぼ巨乳で描かれてるじゃないか! だからそれが刷り込まれて、ロウはエルザを巨乳だと思いこんでしまっていたんだよ!」


「なんだってー! ……と言いたい所ですがギード先生。

 実際に同じエルフの姉妹であるメルエがそんなに胸がない訳ですから、その説は大分無理があると思うのですが……?」


 ギードが『ぬ……こんな時に冷静だな』と、歯ぎしりをする。


「違うわ、にい様! 私は今は成長期でまだこれからですが……。

 後数年してエルザ姉様と同じ歳になればバインバインのボインボインになります。

 きっとロウさんはそれを察知してエルフは巨乳だと錯覚していたのではないでしょうか!」


 半ばヤケになってメルエもまださほど成長していない胸をアピールする。


「あっ、そうだ! ロウはメルエから姉は胸が大きいって聞いていたんだよ!!」

「ビッグアイデア! そうです! そんな話をロウさんと前にしたのを思い出しました!」


「……それならつじつまが合いますね……」


 オットーがしぶしぶ納得したのを見て、ギードとメルエとロウが再びエルザの方を確認する。

 今まで透けて消えかけていた姿が再び現れ、元の状態に戻ってゆく。

 しかし、完全にはオットーが納得していないのか、彼女の足先の方はまだ透けている状態だ。


「こんなので消えちゃったら成仏できないから、今度は怨念になってロウさんに取り憑いて死ぬまで祟るわよ……」


 青い顔でロウの後ろに立つエルザ。

 ギードもロウの背中に拳銃を突きつける。


「今度余計なことを言いやがったら、くちを縫い合わすぞ……?」


 二人とも大真面目な顔でぼそっとつぶやいた。


「ちょっと止めてよね、そういう本気っぽい事言うの、ハハハ」

「まるで反省していない……」


「……とにかく!!! これで一件落着したんだから、さっさと屋敷に戻ろうぜ!

 とりあえず買い出しはまた後日にするとしても、早く帰って夕食作らないとボスがおかんむりになるぞ?」


 そういえばそんな時間だったと、一同は地下室から階段を上って居城から中庭に出た。

 街の人達はというと、あの後全員逃げたようだ。

 静かな夜の風が一同を出迎えてくれる。


 城門を出た所で、馬車が一台とめてあった。

 きっと彼らがオットー達の為に残してくれたものだろう。

 しかし、これを使って街へ帰れば恐らく熱烈な歓迎を受けてしまう。

 街の人には悪いが、ロウとギードの正体がバレている以上、それはあまり好ましい事ではない。

 直接屋敷に帰る為、オットー達は馬車を遠慮して徒歩で歩き始めた。





「晩飯に喰いたい物はあるか? リクエストなら受け付けるぜ」

「私、サラダが食べたいです。」

「引っ越して来てまだ日が経ってないから、ワシの畑の野菜はどれも無理だぞ」

「それなら帰り道にクレソンが自生している場所がありましたから、少し摘んで帰りますか?」


「私はどうせ食べられないから何でもいいわ。

 ……ただし、膨らんだ缶詰以外ならね」


 そう言いながら幽霊でエルフの姉は婚約者の、魂で結ばれた弟の肩に腰を下ろした。


 帰路につく五人を高く昇った月が照らす。

 彼らの足元から伸びた四つの影。

 それは丘の下までどこまでも長く伸びていた。







◆◆◆







「メルエ、荷物を持つよ。今日は色々と疲れただろう?」

「え? 別に大丈夫です。

 にい様こそ、あちこち怪我をしているんですからこれは私が持ちます」


「こんなの大した事ないよ。それに結局買い出しもできなかったから、僕は荷物がないしね」


 遠慮する妹から、半ば強引にリュックを取り上げるオットー。



 その時。



 リュックの口から残ったもう一つのシュールストレミングの缶詰が、スルリと抜け出た。

 

「あっ」


 全員の視線が集まり、声が重なる。

 その中をスローモーションのように、ゆっくりと落下していく缶詰。

 運の悪いことに、その先の地面には尖った石が埋まっていた。

 皆とっさに逃げようとするが間に合うハズはない。

 

『ボン』という爆発音の後。

 人間とエルフとワーウルフとドワーフ、そして幽霊の阿鼻叫喚の悲鳴が夜空にこだましたのだった。




【完】

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ここまで読んで頂いて、どうもありがとうございます。

 皆様のおかげでなんとか第一章完結いたしました。ウレシー(*´д`*)


 お気づきの方もいると思いますが、この物語は友人との合作でして、私の『欝多めのファンタジー』と友人の『幽霊のラブコメ』を悪魔合体させたものです。

 隙あらば欝グロをねじ込もうとする私と、コメディで押し通そうとする友人の熱い戦いの末の合体事故で生まれた本作ですが、無事終わって安堵しております。

 思い返せば色々とありましたが……『何か戦闘の伏線になるような料理ない? 読んでくれた人が実際に作れて役立つようなレシピ』と頼んだら超長文で業務用ラー油の作り方を送ってきた調理師の友人、何を考えているんだお前は。

 後、『幽霊ものだからシックスセ●スの逆のネタやろうぜ!』と無闇に難易度を上げてくれたり、絶対許さないよ!


 さて第二章ですが、友人が原稿送ってこないので少々お待ち下さい(´д⊂)

 第一章『死のラー油編』に続き、第二章は『魔のボーイズラブ編』になるらしいです。

 なんだそれ!?

 では、ここまでおつきあい下さり、本当にどうも有り難うございました!!

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