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7 二週目 魔術 ミサ

 画面は、平日のコマンド選択画面を映していた。

 一週目では剣術を選択し、休日には休暇とり、街へ出かけた。街へ出かけた際は、ロッソとの遭遇イベントが発生した。


「じゃあ、次は魔術にしよっと」


 ミサは、魔術を選択した。



--------------------------


アリエス学園 魔術棟


 魔術を担当する教師たちのほとんどは研究者である。各教師たちに研究室と実験室が割り振られているため、魔術棟はアリエス学園の敷地四分の一を占める程の広さである。


 その魔術棟の奥にある研究室の前にシャルルはいた。


『ここですわね。失礼しますわ』


 ノックして研究室に入る。

 

 研究室の中は、物であふれていた。壁には一面の本棚には魔術関係の書籍や瓶詰の薬草が入っており、部屋の中央においてあるテーブルの上には魔法道具や魔方陣が描かれた紙が無造作に拡げられていた。さらにテーブルの奥には、本や書類で壁ができている。


『ヒイッ!』


 シャルルが扉を閉めて横を見ると、2m近くの大きさのゴーレムがシャルルを見下ろしていた。思わず、小さな悲鳴が出るシャルル。


『ライキャク、ライキャク。シャルルブラーム、ジョシセイト、イチネンセイ』


『なっ…なぜ私のことを!』


 ゴーレムは抑揚のない無感情な声で来客の知らせと客の正体を部屋中に知らせる。シャルルは、ゴーレムが名前と学年を知っていたことに驚く。


 書類の壁の奥から、背の高いメガネをかけた男がのっそりと出てきた。腰まであるだろう深緑色の長い髪をゆるく一つに束ねている。魔術教師の制服である白いローブは、ところどころに薬草や土の汚れがついていた。

 男は、シャルルの姿を確認すると、顔をしかめた。


『女子生徒が何の用だ』


『新たな魔法の習得のために来ましたの。ところで、このゴーレムはなんですの?なぜ私のことを知っているんですの?』


『このゴーレムは、研究室の警備用に俺が作った。お前だけじゃなくて学園関係者全員、そして、この研究室に来そうな王宮関係者の顔と名前、身分が登録されている。理解したか?』


『それはわかりましたが…』


『じゃあ、とっとと出てけ。俺はお前に魔法を教える暇はない。魔法の習得がしたけりゃ他所を当たるんだな』


 メガネ男は、シッシッと追い払うように手を振り、シャルルに背を向けた。

 そして、シャルルを追い出すためにゴーレムがシャルルの前に立ちはだかった。



--------------------------


[ 1.食い下がる

 2.部屋を出ていく ]


 選択肢が表示される。


「ここで部屋を出ていくなんて選択肢を選べるか!!」


 ミサは、迷わず1番の食い下がる選択を選んだ。


「いかにも研究者って感じの先生だね。こういうキャラも結構好きかも」


「…ユキは、意外と節操がないんだね」


 リーナ、ロッソに続いて新しいキャラクターを気に入るユキ。


「そんなことないよ!インテリで前向きの筋肉質な人が好きなだけ!」


「あ、そう…」


 リーナもロッソもメガネ男もユキの好みの要素が入っていた。



--------------------------



『それでも教師ですの!?ご自身の研究以外にも生徒の面倒を見ることも仕事の一つでしょう!?職務怠慢ですわ!』


『…ったく、めんどくせぇな。』


 食い下がるシャルル。

 メガネの男は、ため息をついて肩を落とした。


『ゴーレム、元の位置に戻れ。』


『リョウカイ』


 ゴーレムは、メガネの男の命令で所定の位置に戻った。


『面倒を見るには条件がある。俺の助手となり、研究を手伝え。それができなきゃ今すぐ出てけ。』


『望むところですわ!』


 助手でもなんでもこなしてみますわ!と胸を張るシャルル。


『そうかい。じゃあ、さっそく仕事な。実験室に行くぞ』


 メガネの男とシャルルは研究室を出て、向かいにある実験室へ入った。


 実験室は、片面がガラス張りになっている。反対の壁には魔方陣が描かれている。ガラス張りの向こうは、数メートル間隔の格子状の線が引かれた地面が広がっている。

 メガネの男が壁の魔方陣に手を触れ、魔法を発動させる。すると、線が引かれていただけの地面に障害物と数体のゴーレムが現れた。それらすべてを囲う壁も出現する。


『ここで、ゴーレムと魔法で戦え。全てのゴーレムを倒せば新しい魔法を教えてやる』


『えっ!?そんなの無茶ですわ!』


 警備用ゴーレムと同じ2m近いゴーレムが四方向バラバラに向いている。


『死角から魔法攻撃すれば簡単に壊せる。じゃ、がんばれ』


 再びメガネの男が魔方陣に手を触れる。

 今度はなんと、シャルルが囲いの隅に飛ばされてしまった。



--------------------------



 画面には、ゴーレムパズルと表示されていた。


「っげ、パズル!ユキ、パス」


 パズルゲームが苦手なミサは、ユキにコントローラーを渡した。


「本当に苦手なのね」


「頭使っていると眠くなっちゃうから。それに、ユキはこういうパズル好きでしょ?」


「まあね」


 ボタンを押すと、ルールとマップが表示された。


「ミサ、紙とペンかして」


「え、はい」


 食い入るようにルールとマップを見るユキ。ミサは、電話の横においてあったメモ帳とペンをユキに渡す。

 ユキは、渡されたメモ帳にマップを書き写し、パズルに集中する。


「ユキがパズルに集中すると、私の声なんか聞こえないからなあ」


 手持無沙汰になったミサは、説明書のページをめくり、メガネの男の紹介文を読む。


【リューク・エピナール(攻略対象)

 アリエス学園の魔術教師。研究者としては優秀だが、口と性格と目が悪い。生徒からの人気はない。

 学問:◎ 剣術:× 魔術:◎】


「へぇ、一応、攻略キャラなのか」


 次に魔法の説明が書かれたページを開く。


【魔法は、ゴーレムパズルを解いた後にもらえる魔法書を使い、練習することで習得できます。平日の最後に習得の成功失敗がわかります。失敗した場合は、次に魔術を選択した週で習得しますが、新しいゴーレムパズルに挑戦することはできません。】


「つまり、魔法を習得するまで新しい魔法書は手に入らないってことか」



 

 それから10分経った頃、「解けた!」とユキは顔を上げた。


「おぉ!すごい!」


 ユキの操作で順調にゴーレムが倒されていく様子にミサは感嘆の声をあげた。



--------------------------

 

 すべてのゴーレムを倒したシャルルは、リュークの魔法で飛ばされる前の位置に戻ってきた。


『へぇ、意外とやるな。』


 シャルルの活躍にリュークはニヒルな笑みを浮かべた。


『約束通り、新しい魔法を教えてくださいませ!』


『そうだったな。ほらよ。』


 リュークは、ローブの袖から出した小さなノートをシャルルに渡した。


『さっきは、火属性の初級魔法のファイアボールを使っていたな。それの上位互換の魔法、ファイアアローの魔法書をやる。それを読めば習得できるだろ。』


 シャルルは、ファイアアローの魔法書を手に入れた。



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 ピロリンと好感度上昇のSEが鳴る。

 そして、シャルルのミニキャラが魔法を練習する様子が流れ、平日の終わりになった。

 

「よし!ファイアアロー覚えた!」


 画面には、習得成功の文字が表示され、シャルルのミニキャラがジャンプをして喜んでいた。


「ユキがいて助かったよ!ありがとう!」


「ふふ、どういたしまして」


 ミサは、ユキの手を握って上下に振った。





実際にゴーレムパズルを作りました。(パズルについては、活動報告にて)

もしよろしければ、チャレンジしてみてください。


【ゴーレムパズルのルール】

1.ゴーレムの視界は、一方向のみである。視界の中に入ると、攻撃される

2.ゴーレムの視界(攻撃範囲)は、壁や障害物までである

3.キャラクターが1マス動くごとに、ゴーレムの視界は時計回りに90度回転する

4.キャラクターの魔法は、向いている方向に2マスまで飛ぶ

5.キャラクターが向きを変えるだけならゴーレムは動かない

6.ゴーレムの側面・背後から攻撃して破壊することができる

7.破壊したゴーレムのマスを通過することができる

8.キャラクターは1マスずつ進む

9.キャラクターは、障害物を通過することはできない

10.ゴーレムをすべて破壊したらクリア


挿絵(By みてみん)

(URL: http://14463.mitemin.net/i146705/ )


緑色は、スタート地点です。

黒色は、障害物です。

オレンジ色の範囲がゴーレムの視界です。

矢印は、ゴーレムが向いている向きです。



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