18 四週目 剣術 ミサ
「夜会で分かったのは、現時点で好感度が一番高いのはロッソってことか」
「休日に出会ったのもロッソだけだったもんね。アルジェントはイベントだったし」
「リュークが分からないのが残念だけど、平日ずっと一緒に過ごしてたから、たぶんロッソとピエールの間だと思う」
ミサとユキは、夜会から現時点での攻略対象キャラクターたちの好感度を推測していた。チュートリアルが終わってから一番最初にシャルルを誘ったロッソが一番好感度が高く、次にリューク、ピエールが高いという予想を立てる。
「ねぇミサ、アルジェントの好感度は?」
「ダンスのチュートリアル以降なんだかんだで姿現さなかったからなあ…とりあえず一番下と考えていいんじゃないかな」
「婚約者なのにアルジェントの好感度が一番低いだなんて、シャルル可哀想だね」
ミサの予想を聞いたユキは、シャルルに同情する。
「…そうだね。推測だから断定できないけど、オープニングでも登場した時もリーナと一緒だったから、アルジェントはシャルルよりリーナの方が好きなのかもね」
ゲーム中のアルジェントは、夜会ではシャルルのエスコートをしたが、オープニングや遭遇イベントではリーナと一緒に登場していた。
「今はアルジェントのことは置いといて…さて、今週は何しようかな」
ミサは、平日コマンドをどれにするか考える。
「じゃあ、剣術はどうかな?ロッソの好感度が一番高いみたいだし」
「そうだね。何かイベント起こると期待して…」
ミサはユキの提案に乗り、剣術を選択した。その後、ロッソと稽古をするか一人で稽古をするかの選択肢が現れたが、迷うことなくロッソと稽古することを選んだ。
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アリエス学園 トレーニングルーム
シャルルは、トレーニングルームの扉を開ける。中では、ロッソが木刀を手にして素振りをしていた。
『ごきげんよう、ロッソ様。』
シャルルがあいさつすると、ロッソは素振りの手を止める。
『おお、シャルル嬢。また来てくれたか。』
『はい。今週もご指導の方よろしくお願いいたしますわ。』
『こちらこそよろしく。』
シャルルとロッソは互いに礼をした。
『シャルル嬢、習得している魔法は何かあるか?』
ロッソはシャルルが使える魔法を聞く。シャルルは唐突な質問に驚きつつも、答える。
『魔法は、ファイアボールとファイアアローの二つですわ。』
シャルルの答えを聞き、ロッソはにっこりと笑った。
『ほう、火属性の中級魔法を使えるのか!ならば、火属性の剣技、火炎剣を覚えることができるな!』
ロッソは、シャルルに火炎剣の極意を教えた。
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画面に剣技「火炎剣」を習得した、と表示される。
「え?!いきなり覚えた?!」
新しい魔法を習得するのに一週間かかったことに対し、剣技はあっさりと習得してしまったことに戸惑うミサ。ユキは、説明書の剣技のページを開いた。
「えーっと、
【剣技は、特定の中級以上の魔法を覚えていると剣術を選択した時に自動的に覚えることができます。剣技は、MPを消費して使うことができます。MPは翌日に自動回復します。また、剣技の威力は剣術スキルに、MPの量は魔術スキルに関係します。】
…だって」
「なるほど、ファイアアロー覚えたから剣技も覚えることができたのか。…あっ、戦闘始まる!」
ユキが読み上げた説明にうなずくミサ。戦闘が始まり、慌ててコントローラーに指を構える。
画面に表示されているシャルルのHPゲージの下には、MPゲージが追加されていた。
「おお!ゲージが増えてる!」
ミサはさっそく剣技・火炎剣を放つ。
すると、シャルルの剣が赤く輝き、炎を纏う。シャルルは炎を纏った剣を大きく振りかぶり、ロッソを攻撃した。ロッソのHPゲージがごっそり減り、ロッソの残りのHPが2割になっていた。シャルルのMPゲージは半分以上減ってしまい、二発目を撃つことはできなくなってしまった。
「火炎剣強い!これなら通常攻撃でごり押し勝てる!!」
ミサは、ロッソの攻撃をかわしつつ、攻撃する。難なく残りのHPゲージを減らし、ロッソを倒した。
「やったああ!!ついに勝ったああ!」
「おめでとう、ミサ!」
「ありがとう!ユキ!」
一週目では全く勝てなかったロッソに勝利し、ミサは喜びのあまり両手を上げて大きくガッツポーズを決めた。
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『ぐっ…俺の負けだ。』
『か、勝ちましたわ…!』
ロッソは膝をつき、降参した。
『腕を上げたな、シャルル嬢。…もう少し本気で挑む必要がありそうだ。気合入れていくぞ!』
『はい!』
シャルルは気を引き締めて返事をした。
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そして日が変わり、再び模擬戦闘が始まった。
「よし、いくぞ!」
ミサは再びロッソに火炎剣を放つが、HPゲージを4割しか減らすことができなかった。通常攻撃もなかなか通らない。ロッソの攻撃力が上がり、ロッソの攻撃を受けたシャルルはあっさり倒されてしまった。
「いやー!強化されすぎー!」
今までより倍以上強くなったロッソにミサは悲鳴を上げる。火炎剣でロッソを楽に倒そうとしていたミサの考えは打ち砕かれてしまった。
「一度倒されるとさらに強くなるみたいだね」
ユキの言葉にミサは項垂れた。
「師匠の壁は厚いってか」
結局、ミサは強化されたロッソを倒す事はできず、平日が終わってしまった。しかし、休日にならずに自動的に会話が進み始めた。
「おや?」
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『シャルル嬢、明日は暇か?』
『明日ですか?特に予定はありませんわ。』
首を横に振るシャルル。すると、ロッソは懐から一枚のチラシ取り出し、シャルルに見せた。
『ふむ。急な誘いで申し訳ないが、明日、ともに騎士団の公開訓練を見に行かないか?公開訓練では、騎士同士の模擬戦闘が行われる。剣の達人たちの動きを観察することも剣術の上達への一歩になる。どうだ?』
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画面には、選択肢が表示される。
[ 1.誘いを受ける
2.断る ]
「デート、だよね?公開訓練を見に行くとか色気のかけらもない」
「デートと言うより社会科見学みたいだね」
ロッソの好感度が一定以上を超えたため、シャルルはデートに誘われた。しかし、デートの内容にミサとユキは苦笑いになる。
「やっと乙女ゲームらしくなってきたね、ミサ」
「うん、そうだね。内容がデートっぽくないけど」
ミサは、1番の誘いを受ける選択肢を選んだ。