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10 二週目 休日 ミサ 前編

 シャルルがファイアアローを習得した画面から、シャルルの自室の背景画面に変わる。画面には、現在の体力、各スキル値が表示されていた。

 ミサは、剣術と魔術の体力消費値をメモ帳に書き写し、シャルルの残りの体力から魔術の消費体力を計算する。


「えーっと、体力が110から80だから、魔術は、体力を30消費か」


「休まなくても大丈夫そうだね」


 体力の消費が最も多いのは剣術であり、最も少ないのは学問である。魔術はその二つの間である。

 仮に次に剣術を選んでも、体力は残るため、休日に休暇を選ぶ必要はない。

 

「二日とも外に出て体力増強を狙ってみよう」


 平日が終わり、休日に日が変わる。

 だが、休日のコマンド選択が現れず、自動的に会話が進んだ。


「あれ?イベント?」


 ミサは首を傾げた。



--------------------------


ヴァルゴ王国 王都


『今日は広場の向こうにある小物店へ行くわ。』


『かしこまりました、お嬢様。』


 シャルルと侍女は、広場の前に来ていた。二人は、広場の先にある小物店へ向かう途中である。

 広場の中央には噴水があり、噴水の前ではよく知る人物が少女と談笑している。


『あの方は、アルジェント様!』


『隣にいるお嬢さんは誰でしょうか。身なりを見たところ、平民のようですが。』


『平民?』


 シャルルは、少女の身なりを確認した。侍女の言う通り、アルジェントが談笑している相手は平民の恰好をしていた。

 街中には貴族と平民が入り混じっているが、貴族と平民が談笑することはない。せいぜい貴族の客が平民の店員と会話する程度である。


『どうされますか?お嬢様』


 侍女はシャルルに尋ねた。



--------------------------


[ 1.無視して先を急ぐ

 2.アルジェントたちに話しかける

 3.帰る ]


「どうする?ミサ」


「うーん、どうしようか」


 ミサは、無視するか話しかけるか迷っていた。オープニングでシャルルを殺したアルジェントに良い印象を持っていないミサは、アルジェントとあまり関わり合いを持ちたいとは思っていない。


「そういえば、オープニングだと、ヒロインとシャルルはあそこで初対面じゃなかったっけ」


「少なくとも、リーナの方はそうだったね」


 オープニングを思い出すミサとユキ。シャルルはリーナのことを認識していたが、リーナはシャルルのことを知らずにアルジェントと親交を深めていたせいで大惨事になった。


「もしかして、ここでリーナにシャルルのことを認識させたら、バッドエンドは回避できるんじゃない?」


「たしかに!ナイスアイディア!」


 ユキの提案にミサは膝を叩いて同意した。ミサは、2番の話しかける選択肢を選んだ。



--------------------------


『ごきげんよう、アルジェント様。』


 シャルルは、アルジェントの後ろから声をかけた。アルジェントは、驚いてシャルルの方を振り返った。


『やあ!シャルル。こんなところで会うなんて奇遇だね。』


 やや上ずった声だが、アルジェントは笑顔でシャルルに挨拶を返した。


『そうですわね。あら、こちらのお嬢さんは?』


 シャルルは、アルジェントと談笑していた少女の方へ近づく。少女は、いきなり貴族令嬢が近づいてきたので驚きと緊張の表情を浮かべている。


『ごきげんよう。私はこちらのアルジェント・ヴェルナー様の婚約者で、シャルル・ブラームと申しますわ。』


 シャルルはややスカートを持ち上げて頭を下げ、令嬢として完璧な挨拶をした。少女も慌てて挨拶をする。


『は、初めまして!私はリーナ・クラリスです!アリエス学園の1年生です!』


 リーナもまた頭を下げて挨拶をした。


『まあ、そうでしたの?私もアリエス学園の1年生ですのよ。』


 シャルルは、手に持っていた扇で口元を隠して笑い、自然な動作でアルジェントの腕に自身の腕をからませ、リーナに問いかけた。


『ところでリーナさんんは、アルジェント様と何を話していたのかしら?』


『え!?えーっと、特にこれといった話はしていません。たまたまここでお会いしたので、挨拶をしました。』


『そう。アルジェント様はこの子とお知り合いでしたのね?』


 アルジェントの顔を見上げるシャルル。アルジェントは、シャルルの方に顔を向けて答えた。


『ああ。入学式の日、敷地内で迷子になっていた彼女を会場に案内したんだ。』


『学園の敷地は広いですものね。さすがアルジェント様、お優しいですわ。』


 二人の会話を見ていたリーナは、勢いよく頭を下げた。


『アルジェント様、シャルル様、すみません!私、お使いがあるので失礼します!!』


『引き留めてごめんなさいね。リーナさん、学園でお会いした時はよろしくね。ごきげんよう』


『失礼します!』

 

 リーナは、再び頭を下げて市場の方へ駆けていった。


『アルジェント様、ごめんなさい。お邪魔だったかしら?』


『いや、そんなことはないよ、シャルル。』


 そう答えるアルジェントだが、まっすぐ前を向いていたので表情は読めない。


『ところで、シャルルも用事があるんじゃないのかい?君の侍女がそこにいるけど』


『ええ、ちょっとお買い物を。アルジェント様もご一緒にいかがですか?』


『そうだな、せっかくの婚約者のお誘いだ。ぜひ、エスコートさせてもらおう』


 そして、アルジェントとシャルルは小物店へ向かった。



--------------------------



「怖っ!シャルル怖い!」


 リーナに対するシャルルの牽制にミサは叫んだ。しかし、ミサの表情は明るい。本当に怖がっているわけではなく、むしろ面白がっていた。


「すごいね、これでバッドエンドは回避したんじゃない?」


「そうだといいなあ」


 シャルルとリーナが知り合ったため、オープニングのようなバッドエンドを回避したと考えるユキ。ミサもうなずくが、完全に回避したとは考えていなかった。


「でも、油断ならないから、もっともっとシャルルを育成しないと」


「そうだね」


 ミサの言葉にユキもうなずく。

 画面は、一日目の休日が終わり、二日目の休日になっていた。


「あれ?体力の最大値が増えてない。というか何も変化ない」


 体力の最大値だけでなく他のスキル値にも変化はなかった。


「イベントだったからじゃない?」


「アルジェントめ!」


 街に出かけたが、イベントだったため、体力の最大値は上がらなかった。二日続けて街に出かけて体力の最大値を大幅に上げようとしていた狙いは外れてしまい、ミサは頬を膨らませた。




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