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 05

 膝に何か当ったので、思い出す。コートのポケットにエリックからもらった煙草の箱を入れたままだった。

 出してみると、赤いボックスの見たこともない銘柄。

 外国のものらしいがずいぶん重い。封は開いている。

 仕方なく、ほとんど骨だけになったチキンをそっとサイドテーブルに置き、手の指をなめてから布団カバーの端で拭いて(由利香に見られたら殺される)、箱の中をみる。

 煙草ではなくティッシュの包みがぞんざいに突っ込んであった。

 そしてその上に、何かの紙をちぎって書いたようなメモ。4つにたたんで挿し込んだように上に乗っている。

 まずそれを拡げると、山や道のような線が黒いペンの殴り書きがあった。そのまん中あたりに×印。

 そこに矢印で「TINTORETTO」の文字、絵図の上には「IRIAN JAYA」とあった。

 インドネシアの地名だ。

「連れ帰ってくれ」の意味にようやく気づいた。

 メモの下、三つのティッシュの塊に目が行った。上の一つを拡げてみる。

 寝室の薄暗がりの中でも、大粒ダイヤのまばゆい輝きが目を射た。あとの二つも、ダイヤだった。


 とんだプレゼントだな。こんなもの、もらえるわけがないだろう? オレが小心者の一般市民だということを知らないのか。

 それでも気持ちだけ、いただいておこう、このメモといっしょに。


 メリー・クリスマス、エリック。



 包みを注意深く箱に戻してから、じっくりと傍らに横たわる二人の寝顔をみた。

 幸せそうな、かるい笑みを浮かべている。二人とも、どうして寝姿と笑顔とが一緒なんだろう。

 見つめているうちに、帰ってきた、という思いが、胸にせまる。


 

 オレはちゃんと、帰ってきたんだ。

 ただいま、そして、待っていてくれてありがとう。





   

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