05
鏡台から口紅を何色が選び、明るい所で確かめてから「動かないでよ」彼の背中に、勢いよく何本か線を描いた。
「うわっ」
「本物より、マシでしょ」少し離れて
「これだけ暗いし、離れていればミミズ腫れにみえるでしょ」
しっかりと結わえつけられ、彼は少し不安げに身をよじる。
袋小路にあえてわざわざ逃げこむ動物はいない。彼の本能は、束縛に対して激しく抵抗しているらしいけど、残った理性のほんの一部が、私を信じて身をゆだねてくれたようだ。
大急ぎで煙草に火をつけ、彼の脱いだ服をまとめてベッドの下にけり入れた。クローゼットから、陳腐な柄シャツとジーンズを取り出し、下着も一式そろえて、ベッドの上に丸めておいた。トランクからついでに浣腸器も出して(これはでかい)、彼の立っている近くに転がしておく。
急に思いついて、グラス二つにウィスキーのオンザロックを作る。片方は景気づけにぐい、と自分で呑みほし、もう一つのグラスを持って、彼の横に立って言った。
「さ、これ飲んで」
言われるまま、彼は首を伸ばし、一口すすった。
「全部は無理」「十分よ」残りを、彼の頭からぶちまける。ぶるっと頭を振った彼に
「ごめん」
小さく謝って、今度はティッシュを何枚か水で湿らせ、丸めて彼の近くに捨てておいた。一つは尻に貼って、ぱちんと片手で上からたたく。
「いい? 役割分かってる?」
「だいたい」
「いいわね」
ちょっとおかしくなってきた。見た目は本当にボンボンをいじめてる光景。
「忘れてたら、本当にぶったたくからね」
そして、赤い握りの革鞭を手にした。急にみなぎるSMパワー。
私は、床を打ちすえる。
二回、三回、声を張り上げた。お腹の底から。
「何度言ったら分かるの、このブタ野郎。アタシが口をきいていいって言うまで、汚い口をお開きでないよっ!!」




