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支部長からの電話を受けたのは、23日の朝だった。
今日明日は、サンライズではない。会社名・青木一晴、本名・椎名貴生は有給休暇消化中。由利香が持ってきた電話を受け取った時は、まだ布団の中だった。
電話はいきなり用件に入っていた。
「パーティー会場に潜入して、書類を盗み出して欲しいんだ。24日の夕方」
「ふぇ?」
眠気はふっ飛んでいたが、とぼけたい気持ち120パーセント+30パー。
「パーティーって、明日でしたっけ? もしかして」
「そう、24日」
「ええと、パーティーって言うと、招待状が」
「取り寄せた。なんとか一組分」
「服がないです」
「ボビーとルディーが衣装部から借りてきた」
「あのですね」たいがい、この言葉の後に続く言い訳には説得力が欠ける。
「今、有給休暇なんです。それも今日明日。理由もちゃんとありますよ。今日は鎌倉のばあさんの墓参りで、明日は娘の誕生日なんです」
「重々承知だ、本当すまない」
「シヴァもボビーも、ルディーだって働き過ぎですよ。しかも25日は絶対休めないし」
「彼らにも連絡した。みな了承した。サンライズ・リーダーに従うと」
ってオレまだ了承してねえし。
「ゾディアックチームは、どうなんですか」
「メキシコに行った」え? 一昨日までグリーンランドだったのに?
「ローズマリーチームは」
「言ってなかったか? 彼は入院中だ」
「聞いてません」ずる休みに違いない。それか飲み過ぎ。痔の手術かも。
「絶対行きませんからね」
「では、今はゆっくり休んでくれ。今日13時から支部の7階、小会議室だから。打合せと準備に今日と明日ギリギリまでかかるから、今夜泊まりのつもりで」
向こうは全然参っていない。電話が切れた。
急に、隣の部屋で双子が同時に泣きだした。
ジョー、立つんだ、ジョー
ゆらりと、サンライズになった男は立ち上がった。