03
会ったのは、これが二回目ね、と私が言うと彼はいや違うかも、と答えた。
「パーティーが初対面かと思ってたけど、オレも最初は」
ベッドの中で彼が答える。
と言っても、私を抱いているわけではない。
たどり着いてまだ十分もたってない。しかも、すごくまずい場所に逃げ込んできたと思うし。
五分か十分もしないうちに、ヤツらがここに来るだろう。
私は一応大人の「彼女」だけど、部下のヤツらは、私のこと今いち好きじゃあないみたい。
信用していた側近の一人をベイブリッジ爆破事件の首謀者だってチクったのが私だと思って疑っているらしい。なんていい勘してるんだろう。
私は、髪を乾かしながら言ってやった。
「そろそろ起きないと。ヤツら、ここに来るわよ」
「どうして」不明瞭な声。いやだ、寝てるんじゃないの?
「さっき、表で騒いでたのがちょっと聞こえたわ。林の向こうに車が何度か通ったし、アンタを捜してたんじゃないかな」
彼は突然、窓から入ってきた。
気の早いサンタさんだ。そう言ってやると彼は
「すみませんが、少し休ませてくれませんか」
だって。
あまりにも礼儀正しい不審者なので、ベッドに案内してやった。
「こっちに逃げて来たの、見られてたのかもよ」
「そう?」ようやく、彼が顔を上げた。
暗がりの中でも、だいぶ疲れきっているのがわかる。でも言うことはにくらしい。
「キミ、魅力的だからヤツらも言うこと聞いてくれるんじゃないの? それに大人の彼女なんだろう? みんなヘイコラしてくれるんじゃないのか」
「んまあ」ベッドに寄って、布団を引きはがす。
「かくまってやってんじゃん。何言ってんのよ」
「まあまあ落ち着いて」
どっちが落ち着かなきゃならないのさ。
「少しだけ、知恵貸してくれよ、頼む」
手首をつかまれて、引き戻された。
思ったより力は強いが、決して無理やりという感じではない。ふわり、と私は彼に寄りそった。ダンスみたい。
押しつけられた胸の、その鼓動に私は魅入られた。よれよれになった白いワイシャツから感じる、洗った時のかすかな甘い香り、外の冷気をくぐった森林の香り、そして、緊張と、恐怖による汗の匂い。
どうにかしなくちゃ。私の鼓動も早くなった。




