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 02

 凍死して、春にテンやらカラスやらにつつきまわされた姿で発見されるのと、奴らに捕まえてもらって、あまり楽しくない扱いを受けて挙句の果てに後頭部に一発食らって海に捨てられるのと、どちらがいいか。

 どちらもまっぴらだ。

 手足の先がすでに何も感じないし、口を覆ったハンカチのふちがシャーベット状に固まって、体もすっかり重く感じるこの深い雪の中で、なぜか、今は死ねないと強く思っていた。

 タフという言葉では片付けられない、だが、未練というにはもう少し前向きな気持ちか。

 帰らなければ……彼はまた頭を持ち上げ、前を見据えた。


 崖下のコテージが、木々の間からふと目に入った。ひとつだけ明りがついている。先ほど逃げていた時には、全然気づかなかった。

 パーティーでの会話が断片的によみがえる。

「ここには戻らない。お店に寄ってからそのままコテージに帰るから、いいでしょう? 大人」

 小柄だが、意思の強そうな目をしていた。あの大人がもてあますような女性の顔が突然頭の中に像を結んだ。

 彼女に愚痴めいた言い方をしていたくらいだから、かなり近しい関係なのだろう。大人の次の弟であるヨンファが軽く頭を下げた様子からみても、どうも大人お気に入りの愛人か、そんなところだろう。

 ボビーの言ってた、SMの女王様ってヤツかも知れない。店に寄る、と言っていたのも思い出したし、確かに、パーティーでちらっと顔を合わせた時にそんな雰囲気も持ち合わせていた。


 だが、その時彼は、実はもっと別の何かを思い出していた、過去に繋がる、もっと別の何か。

 彼女のあの目……あれはもしかして。


 彼は頭を振って急いで思いを現在に引き戻す。


 外出してすでに帰っていたのだろう、女は一人だろうか?

 どうせダメ元だ、少しくらい素敵な思い出があってもいいだろう。


 サンライズはすでに明かりに向かって歩き出していた。


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