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 09

「こういうヤツは、見かけによらず強情なんだが、まあ、オイラにかかりゃ」

 ヨンファも一歩踏み出して、つかまれたままの彼のあごに手をかける。

「こいつの目的は? タダの盗みだったんですか?」

「いや」にやけていたエリック、突然哀れな捕虜をマイキーから引きはがし、目の前に突き飛ばす。

 サンライズは小さなマホガニー製の家具にぶち当たった。

「おい気をつけろ」

 大人がイライラした口調で

「その男はどうなってもいいが、机は年代物だぞ」

「ああ悪いわるい」

 エリック、にやりとしてから、机のわきにうつぶせに倒れる男の背中に片足をかけた。

「ほら、さっき何て言ったか、ここでも歌ってみろよ。何て言ってたっけ? 盗みじゃありません、頼まれたんです、って。誰にだっけ? ほら、言えよ、言え」


 ぐいぐい踏みつけらるたびに、脇腹に激痛が走りつい呻きが漏れる。だが、体は少しずつ前に押し出されていくのがわかった。

「やめてくれ」

「なら、早く吐けよ、言え」

 右手の先が、大きなデスクの下に届いた。怪しまれないように手を伸ばす。

 あった、手の先に触れたのは、まさしく落としていったあの万年筆だ。


「ら、乱暴しないってもう」涙声で訴える。

「さっき、言ったじゃないか」机につかまり、哀れな捕虜はどうにか立ち上がる。


 ペンを落とすな……脇を押さえるフリをしながら、なんとか袖口に隠すことができた。


「オマエさんがさっさと吐きゃ、これ以上痛い目にあわずに済むんだ」

 エリックがさっと片足を出した。両手で下腹をかばう。

「やめろ」

 エリックの猛烈な蹴りが入った。手首にかばわれたものの、一撃はもろ、下腹に食い込み、彼はまた倒れた。体を二つ折りにして、激しくせき込む。


 しかしそのすきにペンのキャップを回した。かすかに酸の匂い。中のデータはこれで消えたはずだ。


 体を折り曲げて苦しそうに咳き込む彼を、部屋中の男が見下ろしている。

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