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「こういうヤツは、見かけによらず強情なんだが、まあ、オイラにかかりゃ」
ヨンファも一歩踏み出して、つかまれたままの彼のあごに手をかける。
「こいつの目的は? タダの盗みだったんですか?」
「いや」にやけていたエリック、突然哀れな捕虜をマイキーから引きはがし、目の前に突き飛ばす。
サンライズは小さなマホガニー製の家具にぶち当たった。
「おい気をつけろ」
大人がイライラした口調で
「その男はどうなってもいいが、机は年代物だぞ」
「ああ悪いわるい」
エリック、にやりとしてから、机のわきにうつぶせに倒れる男の背中に片足をかけた。
「ほら、さっき何て言ったか、ここでも歌ってみろよ。何て言ってたっけ? 盗みじゃありません、頼まれたんです、って。誰にだっけ? ほら、言えよ、言え」
ぐいぐい踏みつけらるたびに、脇腹に激痛が走りつい呻きが漏れる。だが、体は少しずつ前に押し出されていくのがわかった。
「やめてくれ」
「なら、早く吐けよ、言え」
右手の先が、大きなデスクの下に届いた。怪しまれないように手を伸ばす。
あった、手の先に触れたのは、まさしく落としていったあの万年筆だ。
「ら、乱暴しないってもう」涙声で訴える。
「さっき、言ったじゃないか」机につかまり、哀れな捕虜はどうにか立ち上がる。
ペンを落とすな……脇を押さえるフリをしながら、なんとか袖口に隠すことができた。
「オマエさんがさっさと吐きゃ、これ以上痛い目にあわずに済むんだ」
エリックがさっと片足を出した。両手で下腹をかばう。
「やめろ」
エリックの猛烈な蹴りが入った。手首にかばわれたものの、一撃はもろ、下腹に食い込み、彼はまた倒れた。体を二つ折りにして、激しくせき込む。
しかしそのすきにペンのキャップを回した。かすかに酸の匂い。中のデータはこれで消えたはずだ。
体を折り曲げて苦しそうに咳き込む彼を、部屋中の男が見下ろしている。




