03
パーティーはホテルの三階、大宴会場で開かれている。
17時から、深夜0時半までの予定だ。サンライズ、ちらっと時計をみた。
17時55分。
ミッション開始は、もうすぐだった。
サンライズはまわりの雰囲気にわが身を溶け込ませながら、さりげなく件の男の様子をうかがう。
マオ・ライ大人は堂々とした立ち姿で、あまたの取り巻きに囲まれていた。
着ているスーツは、ミラノのなんとかというブランドのオーダーメイド(詳細資料に書いてあったが、元よりサンライズが知るはずがない。ちなみに彼が着せられているのも有名なブランドらしいが、スーツは二万円まで、という男にはあまり関係がない話だった)、身長は180以上あるだろうが、体重も多分それ近くまであるだろう。
なのに、ブヨブヨした感じではなく、どことなく筋肉質にしまって見える。
巨大な肩の上に乗った顔は、東洋人というよりはどことなく南欧系のようだ。
ボーイからカクテルを受け取って、無造作に一口で飲み干して空のグラスをすぐさま返している様子からみて、かなりの酒豪のようだ。
まわりを取り囲む華やかな連中と談笑しながらも、彼自身が楽しげに笑うということはめったにない。周りがどんどん盛り上がる中で、彼はますます冷静に、落ち着き払ってみえた。
太い眉の下からのぞく白目がちの眼が、時々鋭くあちこちを向く。
まるで油断ができない。
何度か、サンライズも自分がにらまれたような気がして、思わず身をすくめた。
何度でも言うが、本来なら、今夜は非番のはずだったのだ。