05
「ぶぁっかもん!」香港在住の磯野ナミヘイだ。
「逃げられて、私のせいにさせるつもりか? キサマ。引き継ぎはしてないのか」
「申し訳ありません」震える手で、秀明くんは鍵を外して扉を開けた。
「歩け」
エリックは、手錠がけの男を前に押し出した。殴られ蹴られていた男は俯いてぶるぶる震えている。
ついて行くべきか、秀明は少し前に進み出たが、
「ご苦労、後はオレがやるから扉を閉めておくように」
「あの……先に大人に報告を入れませんと」
エリックはふん、とまた鼻を鳴らす。
「オレが信用できないんだな」
「いえそんな」
突然、目の前に飛んできたコインを、秀明はあわててつかまえた。連れの看守の前にも一枚。日本の五百玉だった。
「コーヒーでも買え」
「あ、ありがとうございます、閣下」
エリックと男とが視界から消えると同時に、彼はついその場にへたり込む。連れも大きくため息をついてから、飛んできたコインをまじまじとみている。日本の五百円玉だった。
「すげえな」秀明も握っていたコインを見る。「しかも記念硬貨だぜ」
階段を上がりきって、看守の気配が完全に消えてからエリックがほおっと息をついた。
「やったぜ、まさかこんなにすんなり……」
サンライズ、無言でエリックを制す。
「あ、すまん」
二人して、エレベータに乗り込む。ドアが閉まった瞬間、エリックは彼の手錠を外した。二人は目を合わせた。




