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パーティーは盛況だった。
天井の高い、広々としたホールは人々のざわめきと滑らかな生演奏の響きに満ちていた。
オードブルも美味い(次の作業も控えているので、酒は手に取ってはさりげなくテーブルの隅に置き去りにしていた)。かりっと焼けたトーストの上に、黒い粒つぶ、紅い粒つぶ、ベージュのまったりなど、銀のトレイに所狭しと並んでいる。
オードブルだけでなく、テーブルに並ぶ料理も、まず目をみはる程美しい。
そして何よりも集う人々の豪華絢爛なこと。
香港の五つ星ホテル『オリエンタル・ベイ』のオーナー夫妻、レイモンド&ダッジ銀行日本支社の頭取と副頭取、芸能に疎いサンライズですら知っているような人気テレビタレント、政界、財界、スポーツの世界から芸能界までありとあらゆる輝きの中から人々がこのフロアに舞い降りたかのようだ。
そして今夜のホストが、大物中の大物――『光明』グループ総帥のマオ・ライ大人だった。
香港でまずしい大家族に生まれた彼は、苦学の末イギリス、アメリカを転々として、始めは皿洗い、次にフロア清掃、配車担当、とホテル業務のさまざまを経験し、オーナーに目を止めてもらってからはフロント業務、マネージャーと昇格し、ついにはホテルの経営すべてを任されるまでになった。
今では、世界各国の主な観光地に五つ星ホテルを持つ。押しも押されぬ「時の人」だった。
そんな彼らのグループが、しばらく前から日本にも進出し始めた。手始めは横浜の埋め立てエリア。
ここがいずれは産業の中心地になると見込んでのことだ。
昔から日本びいきだった彼は、プロトタイプのホテルを一つ、自らが買い取った広大な敷地内にある港の正面に建て、すぐ後ろには林を背負う丘陵地帯に沿って、来賓用の長期滞在用コテージまで何軒か建てていた。港の周辺には商業施設も充実させ、そこはまさに一大テーマパークの様相だった。