09
書斎のドアは鍵がかかっていた、がルディーが言っていたようにピンで簡単に開けることができた。 胸のバラがようやく役に立った。
先ほどの『シェイク』でも頭痛は軽くて済んだ。
二人とも同じキーが使えたのが幸いした。サンライズを大人の部下だと思い込み、逃げた二人をすでに捕えて屋敷に連れて行かせた、という説明も信じ、おとなしく持ち場へと戻っていった。
今夜はそれについては幸運だ。サンライズはバラを襟元に戻しながら思う。
クリスマス・イヴの奇跡だろうか。
音もなく中に滑り込み、また静かに鍵をかける。懐中電灯は先ほど警備の一人から「借りた」ので光源には不自由ない。さっさと万年筆を拾って処分しなければ、と一歩踏み出した。
今入ってきたばかりのドア向こうから、かちり、と音がした。
心臓がひとつ飛ぶ。部屋の隅にソファのセットがあったので電気を消して長椅子と壁の間にぴったりと身を伏せた。
やはり、そろそろと入り口のドアが開いた。あたりを見渡しながらたちはだかる影が一つ。かなり大きな人物のようだ。
ちらっと、顔が見えた。
大人の末の弟、エリックだった。
パーティーではにやけた笑いであたりを和ませていたが、今は、やや 緊張した面持ちで中に足を踏み入れた。
大人の書斎に何の用事なのか、しかも照明もつけず、彼と同じように懐中電灯を持っている。サンライズは可能な限り目だけでその姿を追う。
まっすぐ金庫のある壁まで来ると、彼はためらいのない手つきで仕掛けを操作し、金庫を引き出した。ダイヤルも番号を覚えているらしく、一度も手を止めない。
金庫が開くと、彼は手を突っ込んで何か取りだした。サンライズの位置からは何かは見えなかったが、懐にしまった所をみると、それほど大きなものではない。
彼は金庫の扉を開けたまま、懐から煙草の包みを出して、しばらくごそごそやっている。火をつけようとしているのだろうか。
のんびりしてるんじゃねえよ、しかも匂いでバレるだろう、何してんだ? 心の中でサンライズが突っ込むのもおかまいなし。
だが急に、はっと顔を起こして身構えた。
話し声が近づいてくる。サンライズもぎょっとなった。大人の声だ。




