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それでも、自分の役割は最後まで捨てていないらしい。
「ファイルは紙でした。ページも10しかなかったので、見開きでフィルムに撮ろうとしましたが、あきらめて」自分の震える両手を見おろす。細かい作業もできなかったのだろう。
「そのまま持ち出しました」
「すまないが、ファイルはシヴァに持たせてくれ」
「もう持ってるよ」シヴァはおなかのあたりを軽くたたいた。サンタとトナカイが直接接触したら、トナカイが資料を持ち出す手はずになっている。
「塀を飛び越えるのに、電流は切った」とシヴァが塀の上を指す。部分的にバイパスをつけたらしく、2メートルくらいの柵の両端から、更に別の線が大きく内側にのびて繋がっていた。
「ルディー、まずシヴァを出すから手伝ってくれ」
「はい」どうにか二人で手を組んで、ばねを効かせ、シヴァの体を外に放り出す。
「機材は」
「これだけです」カバンもひとつ、宙を舞う。
「ルディー、自力で出られそうか?」
いつもなら、少し助走をつければ越えられる高さだが、ルディーはものうげに塀を見ていた。サンライズは声を尖らせる。
「ルディー」
「出られません。それに大変なことに気がつきました」
これ以上タイヘンなことがあるのでしょうか? どこかで冷静な解説口調が聞こえる。
「マイクロフィルムの容器……」
「あのペンのこと?」
「落としてきた、書斎に」がーん。ルディーにあるまじきミス。
「私、取りに戻ります」
「いいよ、放っておけ。しばらくはただのペンだと思ってるだろう。フィルムには何も写してないんだろう?」
「動作してません。しかし……」




