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22時をまわった。だが、連絡はまだなかった。
ミニ・コンサートが始まっている。大人のガールフレンドが好きだと言った歌手かもしれない。若い男が長い髪振り乱し、マイクを食わんばかりに歌っていた。ステージ前の方には、熱狂的なファンじみた観客が黄色い声をあげていた。
歌はうまいのか下手なのか、サンライズにはよく判らなかった。それに……何語なのかも。
もしかしたら携帯の故障では? と思った瞬間、ベルトの内側が震えた。
文面をみて、つい眉が曇る。
「赤鼻トナカイ酔っぱらう。二頭は国境近くで待機。サンタの助け乞う」
ルディーがまた、発熱したのだ。
ホテル内部での受け渡しが出来ない状態で、それでも何とか決められた脱出ポイントまではたどり着いたらしい。
そこまで行くしかなさそうだ。
「トナカイ、いるか?」
サンライズの呼びかけに、シヴァがようやく安心したように立ちあがる。
茂みに潜んでいたシヴァ、表情だけは冷静沈着だが、こちらを見た目だけがらんらんと光り、追い詰められた野生動物のように体中から緊張をみなぎらせている。
「サンタさん、来たね」息が白く踊る。
珍しく泣きそうな声。よほどのストレスだったのだろう。つかの間、哀れを催す。
クリスマス・イヴに、この日本で、普通の若者がこんな暗闇の中で殺されないように身を潜めているということが何だか妙に可哀そうに思えてきた。
「赤鼻は?」
シヴァは、目で後ろの薮を指す。行ってみたら、
「すみません」
やはり、ルディーは熱がぶりかえしていた。ちゃんと座ってはいるものの、自分でもどうしてここまで来たのかがよく理解できていないと言う。意識が混濁する寸前のように思えた。




