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会場には色々な段階の酔っぱらいが棲息しており、テレビでみたことのある有名なタレントまでもが、ばたんと仰向けにひっくりかえって、数人に運ばれていた。
どこかのジイサンから「がんばれよ、若人よ!」どん、と肩をどつかれてよろめいたとたん、誰かに当った。
「すみません」ふり向くと、いつの間にかマオ大人と、その取り巻きたちに囲まれる形になっていた。
彼がぶつかったのは、その中の、ひときわ美しい女性だった。
「こちらこそ、ごめんなさいね。後ろに気をつかわなくって」
彼女はまっすぐこちらを見上げた。黒くて長い髪をきっちりと結いあげ、真っ赤な幅広のヘアバンドで押さえている。ドレスは黒、むき出しの肩の白さが際立つ。
すんなりした腕にも、耳にも大きめのパーツでできたアクセサリを飾っている。
全体的に赤と黒でまとめて、悪趣味の一歩手前でとどまっている感じだった。華やかな赤と黒の使い手だ。
化粧が濃いのがもったいない。彼女は長いまつ毛とエジプシャンのような縁取りで飾られた目を大きく見開いて、彼をまじまじと見つめた。心もち、首をかしげるように。
サンライズも、じっと彼女を見つめた。
大人が、軽く咳払いした。「失礼しました。おい、ミーナ、足が」
気がつかなかったが、彼女のヒールの先が、彼のつま先に乗ったままだった。
「あら、いやだわ」
女性ははっと我に返り、全く悪びれもせずゆうゆうと足をどけた。
「ねえ大人」近くを通ったワゴンを呼びとめ、透明なショートカクテルをひとつ、取り上げてからふり返りもせずにマオ・ライに声をかける。
「私、飽きたわ。なんだか疲れちゃった」すでにサンライズには興味はないようだ。
「まだ9時にもなってないよ、ミーナ」
大人がこんなにすねたような物言いもするとは、知らなかった。サンライズはワゴンの酒を選んでいるふりをして、少し、その場にとどまってみた。




