ゲームの世界にトリップしました
「パンパカパーン! おめでとう! 貴女は異世界トリップする権利に抽選で当たりました!」
「え」
「じゃあ早速行こうか。ああ大丈夫。衣食住はもちろん、戸籍もお金も何の不自由もないからね」
「ちょ、ま」
「あれまだ不安? ようし、奮発して男キャラは全員魅了補正に、逆らう奴は無条件で悪役シールドもつけちゃうぞ☆」
怪しげな人から(今思えば神様か何か?) からそう言われて、私、高田有須は好きなゲームの世界へ飛んだ。
「アリス様可愛い」 「どうしてこんなに気になるんだろう」 「アリス様のためなら死ねる」
「何よちょっと可愛いからって」 「お高くとまってやな感じ」 「ぼっちの性格ブス」
性別によって両極端な反応を見せてくれるキャラ達。現実世界で見た時は、長所短所含めてみんな可愛かったのに。男は色ボケ。女は嫉妬脳になった。中でも極端なのは。
「アリス、魔王を倒したら俺と結婚してくれ」
ゲームの主人公、サマエル。
「あなた、ヒロイン……じゃなくてメルと結婚の約束をしていたんじゃないの?」
このゲームは魔王を倒すRPG。主人公サマエルは幼い頃、両親を魔王に殺されて以来、仇をとることが使命だと感じ、剣の道一筋で生きてきた。隣の家のメルのうちでお世話になりながら。つまり幼馴染。それでそのメルに、もし魔王を倒したら結婚しようとか十歳で言ってるのが旅の途中の回想であった。
「あれは気の迷いだった。君を知らないうちに言うなんて黒歴史もいいところだ」
「……ところで、魔王を倒すっていうっていうのは」
「ん?ちょっと待てよ。戦ったら死ぬかもしれないじゃないか! そうしたら君と結婚できない! 君と会ったら魔王なんてどうでもいいよ、復讐より大切なものが世の中にはあるんだ……」
そんな私にお熱なサマエルを木の影から見ている人物。ヒロイン、メル。
「信じられない信じられない。サマエルは私のものよ。私のものにならないなら他の人のものになっちゃ駄目なのよ……」
悪役シールドって凄いんですね。
「ああでも、放っておいても魔王は害をなすだろうし……倒すしかないのかメンドイなあ。言ってくるけど、俺以外に浮気しちゃだめだぜ☆」
「うん頑張って。倒してきて。返事はその時するから」
魔王倒しました。勇者凱旋しました。王の前でプロポーズされました。
「だが断る。私、他に好きな人いるもん」
「はぁああああぁぁぁぁぁぁああああ!?」
「姫、私の娘よ。それは一体誰なのだ、勇者以上の男などいないであろうに」
言い忘れてたけど、私はこの世界で王の一人娘になってる。原作じゃ悲恋の相手一筋だった人なのに。気が変わったってことになってる。
「メルです。私の好きな人はメルです!」
辺りがどよめいた。まあそうだろうね。
「何を……気でも狂ったか! この国では同性愛など認めておらん!」
「あ、アリス……どうして、あんな、嫉妬ばかりの、しかも俺のストーカーまでしてた女……」
ぶち切れていいよね?
「性別なんか関係あるか! 大体勇者以上ってね、スペックで人の価値決めんな! それとサマエル! お前何様だ! 幼少期からお世話になった人の娘をよく悪し様に言える扱える! 私に会って心変わり? 真実の愛? じゃあきっと私以上の女が現れたらまた心変わりするんでしょうね! 魔王がどうでもいい? ふざけんなRPG主人公から信念取ったらカスだカス! カスに惚れるかああああ!!!」
言いたいことを言い終えて、隅にいたメルのところまで歩く。
「メル、好きです。私に貴女のこれからをください」
「どうして……」
ぼうぜんとしながら、熱に浮かされてるかのようにぼんやりと言うメル。
「主人公……サマエルを見つけたのは貴女だった。捨てないでって両親に懇願したのは貴女だった。サマエルが好調な時は誰よりも喜んで、つらい時は好きな食べ物を作って慰め、回復したらそっと背中を押して支える。旅の最中でも、恋のライバルが現れたら嫉妬を露にするわけでもなく、落ち込む訳でなく、ただそれが主人公のためになるかを考えていた貴女が、私は大好きなの」
私がいない世界の貴女。ゲームの外から見たメル。そう、私がこのゲームを好きなのはメルが好きだからに他ならない。主人公? あっさり乗り換える男なんか知らないよ。例え悪役シールドで汚染されても、それでもひたすら一途なメル。別人だと思おうとした。でも私がいない時はやっぱり貴女は貴女だったんだもの。呼吸音すら聞こえそうな静寂の中、メルが答えた。
「断って……サマエルのところへ行くくらいなら、私、貴女にあげる」
実った。
「勘当だ――――――!!!! 衛兵! この恥知らずどもを追い出せ――――――――!!!!!」
王宮を無一文で追い出された。それどころか国外追放になった。でも私は幸せだった。メルが、黙ってついてきてくれたから。
「……こんなはずでは……ちくしょうまた呼び出して……」
「そこまでよ」
最初にアリスを呼び出した神? に美女が剣をつきつける。
「法外な利益を与えて、死後は地獄へ連れて行く……よく考えたものよ、悪魔!」
「またお前か天使! だが無駄だ! この世に欲求がある限り、俺は何度でも蘇る!」
聖なる剣で突き刺すが、感触はない。逃げられたらしい。
「……本当に憎らしい。それにしても、今回は成功していなかったみたいだけど……」
天使はひょいっと悪魔の持っていたゲームを覗き込む。
「ああ、悪魔の早とちりなの。……そう、自ら茨の道へ行ったのね。これじゃあ手出しも出来ないはずだわ。でも覚悟なさい、一度悪魔の手をとった以上、死んで天国へいけるかはこれからの行い次第よ」




