僕らは変わった
「なにが」と問われても
僕らは答えられない
「どこが」と考えても
僕らにも分からない
「いつだ」と訊かれたら
「あの時」とだけ言えばいい
僕らは
同じときに
同じものを
味わった
生きること
死ぬことさえも
揺るがされた
あの時
それ以前の僕らとは
絶対に違う
僕ら
でも
何が違うのか
それは分からない
変わってしまった風景を
記憶と比べる
まちがいさがし
「何か違う」というだけのこと
目に見えない場所
言葉に出来ない部分で
僕らは
僕らを
見つめなおしている
命なんて儚いものなのだけど
少なくとも死ぬまでは
僕らのものであるはずだから
生きることも
死ぬことも
遠くにはなくて
今ここに
まさにここに
この場所にあることを
分かった気でいた僕らは
あの時
初めて
それを知った
あの時
僕らは
地面のきしむ
あの恐怖の音を
感じながら
そんな真実を
つきつけられていたんだ
僕らは変わったけれど
それ以外は何も
分からないままでいる
―――
確かに変わりました。
それはふとした一瞬に頭を過ぎる考えであったり、反射的に口にする言葉であったりします。
しかし、それが何であるのかはよく分からない。
「 何 か が 」変わってしまったのです。