雨の赤信号
目の前で赤に変わった信号に
微々たる歩みを止められて
僕は雨の中に立ちすくんでいた
見上げれば
薄汚れたアスファルトが
空にもあって
傘は時たま声をあげ
まだそこにある雨粒たちを受け止めている
望む奇跡が起きなくて
空を恨んでみたりした
僕に天気は変えられなくて
心の中はこんな雨
前は薄雲の向こうで
耀く太陽がその姿を見せていたのに
いつからか空はどんどん暗くなり
雲はどんどん厚くなり
見えるものが減っていった
会いたい人が
見つからない
どうしてか
今日は立ち止まっていたい気分
信号が変わるまで
ここにいよう
願うほど
僕は道が分からなくなる
歩みの先に
太陽が待っているはずもないのに
歩いても歩かなくても
風が雲を連れていくのに
雨はいつか上がるのに
車の流れが途絶えると
幾人もが僕を追い越してゆく
躊躇いもなく
道を渡っていく
誰もいない赤信号に
ひたすら邪魔をされて
僕はまだ立ち止まっている
どこにいくにしても
道は一つじゃないけど
通れる道はいつでも
たった一つだけなんだ
僕はここを歩きたいのに
この道しか知らないのに
まだ赤なんだ
一度止まってしまったから
待ってみようなんて考えたから
僕はまだ動けない
おい
それにしても
遅すぎるんじゃないのか
ふと気がついた
左の方に
赤く光る押しボタン
こんな間抜けなことはないだろう
僕はいつだって
届く場所にある
大事なボタンに気づかずに
何かを素通りさせて来たんだ
僕はいつだって
何一つ確かめもせず
ただ立ちすくむだけで
何かを得られると思っていたんだ
ボタンを押すと
あきれるくらい
あっけなく
信号は青になった
雨はまだやまないけれど
僕にも
信号くらいは
変えられるらしい
―
前向きなのか後ろ向きなのか。
自分の強みを「徹底的に客観視できること」と思っている以上、どちらもしっかり見据えていきたいのですが……。
最近はさっぱり分かりません。
果たして何かを見れているのか、それともただ自惚れているだけなのか。