カッター
少しだけ軽率に
破滅へと落ちて行った人を見て
自業自得と笑った人がいる
僕は驚いたけど
きっと正しいと信じて
そんなことを言ったんだろうな
正義なんてカッターみたいなもんさ
そんなので何かを守れはしないけど
傷つけるには十分過ぎるんだ
百円で買える
薄っぺらい刃を武器にして
誰もが
強いつもりになっているだけ
別に彼らを質すつもりもない
たとえその刃が折れたとして
どうせすぐさま
新しい刃が現れるのさ
それに僕だって
おんなじような安物を
振りかざしてるだけなんだ
でもそんなもので
何かを貫けるはずもなく
何かを倒せるはずもない
そいつを振り回して
英雄にでもなったつもりなのか
誇らしげに
空に掲げた
そのなまくらが
心を突き刺し
人を追い詰めるのも
知らないで
取り出すのも
手に入れるのも
たやすいのなら
収めることも
出来るんじゃないのか
誰もが持ってるその武器が
誰かの心を傷つけるなら
僕はそれを
ポケットにしまいたい
それが正しいことかどうかは
別にして
―――
とあるニュースがやけに気になって、詳細を調べようとしていた途中でぶつかった「自業自得」という言葉。
それが何故か喉に引っかかりました。
その言葉を発したのが一人だけではなかったこともその原因の一つなんだと思います。
何故人は、実際には知りもしないことで誰かを傷つけることを簡単に口にできるんでしょう。
きっと正義の味方にでもなってるつもりなんだろうな……。
ちゃっちい武器を振りかざして。