優先席
色んな人が
色んな想いと共に
腰を下ろしてる
電車の端の席
その目の前に立った時
でかでかと書かれた
「携帯OFF」のマークが
目に入り 僕は
とっさに携帯をしまう
まことしやかに囁かれる
「無意味」の声に
電源までは切らないけれど
ポケットに収めるだけで
誰かが気分を良くするなら
その位はしてもいいかな
その想いを
知るはずもなく
その席を取り囲む
携帯の広告
また新しい商品が出るらしい
この座席のマークは
長いこと
変わっていないのに
最近聞いたけど
やっぱり携帯の電波は
身体に良くないものらしい
ヒステリックに騒いでる人もいた
だけど同じ人が
澄ました顔で
煙を吐き出しているんだ
何がなんだか
生きてること自体が身体に悪いって
笑い話
全てのことに
「可能性」があって
良くも悪くも
何が起こるか分からない
だからこそ
くだらない
意味のない
小さなルールも
守ってみようか
せめて
そうする振りだけは
続けていこうか
僕は携帯を取り出して
電源を切る振りをして
マナーモードに切り替える
誰かに褒められたいわけでもないから
それでいいんだ
―――
マナーを守る理由。
それは自分以外の誰かの世界を整えるためであって、自分の得となることなど何もありません。
ただ、誰かのために。