ある朝
今朝乗った電車の中
向かいに立った女性が
とても綺麗で
可愛くて
ちょっとびっくりしてしまったんだ
名前も知らない美しい人
もともと惚れっぽい性質で
こういうことはよくあって
その度に思うんだ
あの人は僕にとってどのくらい
遠い人なんだろう
もしかして
友達の友達ぐらいの場所に
いてくれたりして
それでも結局届きはしないけど
何か近づけそうな気がしてくるだろ
窓の向こう
扉の向こう
隣の手すりで
何が起きようと
僕には関係のないことで
目に入らない振りをする
どうしろっていうんだ
「僕には関係ない」
僕の知り合いの知り合いの知り合い
そのくらいまでいけば
僕は世界とつながれるかな
それとももう少し
輪を広げなきゃならないのかな
ともかくも
たどってたどってたどった先で
誰もがつながっているって
知ってはいるけど
他人は他人で
僕は素知らぬ振りをする
電車のあの人は
僕なんかには
見向きもせずに
僕が降りたことのない
乗り換えのない
小さな駅で
降りていった
当然さ
友達の知り合いの顔見知りであろう僕は
彼女とは何の関係もない
フツーでどこかパッとしない
一人の男なんだから
扉が閉まった瞬間
僕はもう
彼女の顔も思い出せない
恋だけど
恋ではなくて
知らない女性だけど
他人ではない気もする
そんなある朝の
短いお話
―――
実話のようなそうでもないような。
時々、夢で見たんだかホントにあったんだか分からなくなります。
まぁ多分、現実を美化して夢みたいに仕立ててるだけでしょうが。