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絵かきの国



昔々の その昔



おとぎばなしの



その夢の中



絵かきの国がありまして




美しいその国で



彼らはいつも



いつでも



描き続けておりました





時に葛藤を



赤く燃やして




時に悲しみを



青に託して




そして喜びを



人の目に





幸福を



人の姿に纏わせて






絵かきの国は


狭く 小さく ひそやかで



誰でも入れるわけではないけれど



彼らの描いた



色とりどりの真実達に



誰もが心を 打たれたのです






しかしそんな中



茶色い戦争が始まって



世界は赤く染まってしまいました






それは 踊り狂って



世界を



国を



街を



人を



あっという間に 飲み込んで




黒に



白に



灰に



全てを委ねてしまうのです






そして始まる モノクロの時代



「真実」を写した



フィルムに合わせ




何故か世界が形を変え



失われていく 色の数々




黄色い喜びよりも



青色の絶望よりも



灰色の勝利




白か黒かに分かれた場所に



絵かきなどは



必要ないのでした






いくつかの勝利と



最後の



そして




致命的な敗北




悪夢のような日々の後




瓦礫の中で 人々は



立ち上がって



顔を上げ



少しずつ



少しずつ




前に進んで行ったのです





悪夢を


廃墟を



振り払おうと




ただひたすらに





前へ 前へ




もっと前へ





鉄と




鋼と




アスファルトを積み上げて 生まれた世界




そこは機械のための場所




人は自分が築いたバベルに




押し潰されてしまって初めて



空が色をなくしていることに




気付いたのです





絵かきの国は今もまだ




世界のどこかに



佇んでいて




ひっそり静かに



絵を生み出し続けているのでしょうが




無駄を全て切り捨てた




この世界には




それを受け入れる場所はなくて



静かに 灰に




変わっていくのでした







絵かきの国の絵かきたち




彼らは今 静かに 滅びていくのです






―――



中原中也の詩に「サーカス」という題名のものがありまして、そこに「茶色い戦争」というフレーズがあります。



「その頃が「茶色」なら、今は「灰色」だろう」と思ったところから始まりました。



紙も携帯もパソコンもない場所で言葉をつむいでいた時は、震えるほどいい言葉が浮かんでくるのに、それを思い出してかきとめようとした途端、何か調律がずれてしまいます。



変だなぁ

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