害悪リスナーではありませんよ。えぇ、私は。健全です。
『お前もこのサイト見てみろよ』と学生時代に配信サイトを勧めてくれた友人には感謝しかない。
――えぇー私はそうは思わないなぁ、キミたちのほとんどは……。
今、聞いている配信は女性配信者の引退配信だ。この配信者の引退理由はリスナーによる過度のセクハラ発言で鬱になり福祉就労で生きていくと決意した関係だ。
そして、その配信者にセクハラ発言をし始めたのは私だ。
セクハラ発言をすればコメントを拾って『こういうのはやめてね』と必ず言う。
それに快感を得た私は複数のアカウントを使いまわしてセクハラコメントやメッセージや返信を送っていた。
――さて、犯人のキミは覚悟して! 今、警察にお願いしてるから。
「なーにが警察だ、行政機関がたかだかチャンネル登録1000人ちょっとの配信者の戯言に対応するものか!」
カタカタッとパソコンのキーボードで文字を打った。
『これからはふたりの時間大事にしようね』
もちろん、私はこの配信者と面識はない。連絡先も何も知らない。SNSの一方的なフォローのみだ。それでも彼女は私の女だ。他の誰にも譲らない。
今日も言ってやったと悦に浸っていた。ピンポーンとインターホンがなった。私は実家暮らしなのでおふくろがリビングで対応しているだろう。
気分転換に私もリビングに行ってみよう。
「け!? 警察ですか……?」
「おふくろ?」
インターホンのディスプレイには警察官の姿が写っている。きっと、これはよく聞く詐欺だろう。
これはコメントのネタになるぞ。
そう思って私は玄関に出た。
「失礼ですが、あなたは――ですか?」
「えぇ、まぁ」
おかしい、何も情報は渡していない。それでも事情や証拠と言われたものを見れば思い当たる節しかない。
そう、私の配信者へのセクハラコメントやリプライにダイレクトメッセージなどだ。
「だとしても、これが私だという証拠はありますか?」
「1度署に持ち帰らさせて頂きます」
そのまま警察官は帰った。おふくろへのおそらく詐欺だろうという事情の説明などが終わり自室に戻ると引退配信は終わっていた。
コメント欄を見れば先程のコメントは消えている。
「ふっ、今日もいい声を聞けたな」
私の女はコロコロ変わる。明日にはきっと新たなセクハラができる配信者を見つけるだろう。
※現実の配信者への過度のセクハラは避けましょう※




