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このおっぱいで勇者は無理でしょ  作者: りむ


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10/17

#10 このおっぱいで異世界は無理でしょ①

翌朝、私はベッドの上で目を覚ました。

……柔らかい。そして、妙にスースーする。


(……あ)


昨夜のまま、セクシードレス姿だった。

側から見たら、どう見ても事後です。本当にありがとうございました。


それなのに、いっさい手を出されていない。

私の心の声は大荒れ。


(……え、昨日の私、あんなセクシードレスでうろついたのに!? なんで手を出してこないの!? いや、別に出してほしかったわけじゃないけど……ある程度は……さ……)


視線を落とすと、白い薄布が身体に張りつき、胸元は相変わらず主張が激しい。


(……パジャマにする服じゃないでしょ、これ)


だけど、同棲相手を誘惑するなら、この格好が最適解なんだ。たぶん。


視線を動かすと、部屋の隅のソファーでノエルが寝ていた。

きちんと毛布をかけ、背筋を伸ばしたまま、行儀よく。


一緒に寝るという選択肢も、昨夜は確かにあった。

でも、言えなかった。


(無理でしょ。あの流れで「一緒に寝ませんか?」とか言えるわけない)


メンタルの防御力が低い自分を呪いつつ、私は静かにベッドを抜け出した。


悶々とした気持ちを吹き飛ばすために顔を洗っている間に、ノエルが朝食を用意し簡単に身支度を整えていた。


「おはようございます、ルリ様」

「おはよう。昨日は、ありがとう」


ノエルは少し照れたように頷くと、視線を逸らしたまま言う。

「今日はギルドの業務がありますので、夕方まで戻れないかと」


(……そっか。私が勇者じゃなくなっても、ノエルの仕事がなくなるわけじゃないんだ)


自分のせいで誰かの生活が壊れたわけじゃない。

その事実が、胸の奥に引っかかっていた小さな罪悪感を、少しだけ和らげてくれた。


「うん、大丈夫。留守番してるね」

その言葉に、ノエルはどこか安心したように息を吐いた。


扉が閉まる音を聞きながら、私は小さく伸びをする。


(さて。完全フリーになったわけだけど)


異世界モノの主人公は、割と無職が多い気がする。

前世はニート、転生後はチート無双。


異世界に放り出されて、気づいたらハーレムが完成しているタイプ。

理不尽な理由で追放されて、「実は有能でした」展開に入るタイプ。

最後にざまあ回収が待っていると信じて耐えるタイプ。


テンプレの無職パターンが、頭の中に次々と浮かんでは消えていく。


(……で、私は?)


防具が装備できなくて、勇者になれなかったタイプ(new!!)。


……


(ヒモは無理……。“働かずに男の部屋に居座る”とか、私にはハードル高すぎる……。

誘惑できないなら、働くしかない!)


前世でも、まだ就活したことなかったのに。

アニメショップと映像処理のバイトはしてたけど、そんな概念自体がここにはないので、その経験は役に立たなそう。


(巨乳を活かす職業。……コンカフェかな)


ふと、前世の記憶がよみがえる。


胸が大きいだけで、やたら優しくされる女の子たち。

何をしたわけでもないのに、飲み物を奢られて、席を譲られて、「可愛いね」「大人っぽいね」って言われている姿。

そして、それが収入につながっている。


正直、少しだけ、ほんの少しだけ、羨ましかった。

私は同じような胸を持っているのに、“ちやほやされる側”には、なれなかった。


(……うまく使える人は、使えてたんだよね)


だからこそ、考えてしまう。

この世界なら、ただ“需要があるから”という理由で、受け入れてもらえる場所があるんじゃないかって。

失礼ながら、無職と連続性も高そうでシームレスに就業できる気がする。


(……私も、胸があるだけで歓迎される側になってみたいな)


とりあえず酒場で情報収集だよね。

そのまま働ければ、前世基準だと服装もコスプレっぽいし、巨乳を活かせるかな?

コスプレで売り子するの、やっぱり憧れなんだよね。


いずれにしても、まずは着替えだ。

セクシードレスは、流石に日常向きじゃない。

私はリリアにもらった生成り色のチュニックを手に取った。


被って着るだけ。紐なし。締め付けなし。便利。

多少着膨れしてみえるかもしれないけど、今更気にするほどではない。


セクシードレスを脱ぎ、ブラジャーを手に取ったところで、指が止まる。

と、そこで、ふと気づいた。


目の前には、転移したときにそのまま付けていたブラジャー。

……これ、一着しかない。


サイズはぴったりだけど、ややくたびれている。

毎日使ったら、もっと傷むよね? しかも、洗濯してる間、ノーブラになるの?


一着しかない下着で生活する不安が、一気に現実味を帯びてきた。


前世ですら、私のサイズってなかなか売ってなかったのに……。

しかもここは異世界。


(……そもそも、ブラジャーって概念、あるの?)


胸を支える文化がなければ、選択肢はコルセット一択。

でも、あれは一人で着られないし、日常使いには向いてない。


(詰んでない? 生活インフラの時点で詰んでない?)


私はしばらく天井を見上げた。


(このおっぱいで異世界は無理でしょ)



……でも、生活は続く。


(うん。まずは情報収集だ)


チュニックの裾を整え、深呼吸する。

布が胸のラインを拾わないわけじゃないけど、昨日までよりはずっと安心感がある。


「街をぶらぶらして、下着事情を探ろう……」


自分でも、異世界で最初の自由行動が「ブラ探し」になるとは思っていなかった。

私は戸棚からノエルが置いていった少額の銅貨袋を確認し、そっと家を出た。


(大きいサイズって高いし、仕事も探さないとなあ)


勇者じゃなくなった朝。

胸という才能を持て余しながら、この世界で“自分の居場所”を探して歩き出した。

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