主犯者への復讐の開始
市井川が地面の上で力なく死んだ後で僕は次のターゲットを見下ろした。
リーダー格の梶だ。こいつが全ての犯罪を指示していた。そして女たちを次々にレイプしていた。梶はこの岩手沿岸の地域では警察署長の父親の権力に護られている。梶は好き勝手に犯罪を行っても警察に捕まらない。それがわかった上で梶は女たちをレイプし続けている。きっと被害に遭った女たちは男という生き物に怯えることになっただろう。
だがこの梶は人生に対して何の恐れも怯えも感じることなく、愉しんで毎日を暮らしている。そんな不公平がこの世の中には存在するのだ。もちろんこの梶には誰かが罰を下さなければならない。
「梶、おまえがレイプした女は俺の妻だった。手を出した相手が悪かったようだな」僕は言った。
僕は妻の話を思い出した。レイプ犯が小さな男のモノを妻に挿入して射精してしまうとさらに男が二人、現れた。背の小さい村田と背の高い市井川だ。
僕はレイプ犯の梶、村田、市井川が為した犯行に憤怒を覚えた。それは正真正銘の本物の憤怒だった。どこに行って誰に提出しても間違いようのない正真正銘の憤怒だった。いいだろう、梶、殺してやるよと僕は思った。
そのとき僕はふと日本刀に付けられた銘について思った。刀には漢字で付けられたお堅く、立派な銘が付けられている。名前を付けられると日本刀とは名刀に変えられるのだ。僕は一瞬その日本刀を持って梶を切り刻みたい衝動に囚われた。だがよく切れる刀であっさりと殺してしまうには梶は悪を為し過ぎた。少しずつ、苦しませながら殺してやれと僕の中の憤怒は僕に訴えた。
梶の両足はすでにナイフで深くまで刺された。それから僕は梶の肩にナイフを突き刺して腕の腱を切った。僕の頭には人体の腱に関する知識が詰め込まれている。どこを切れば人が腕を動かせなくなるか僕は知っている。
梶は僕から逃げようと立ち上がり、走り出そうとして再び地面にみっともなく倒れた。
「助けてくれえ!」梶は叫んだ。その声は無人の山林に吸い込まれるように消えた。数々のレイプ犯罪を行っていながら、その罰から逃れ生きようともがく人間とは憐れなものだなと僕は思った。
地面に俯せで倒れた梶の頭を僕は靴底で踏みつけた。「動くなよ」と僕は親切に、優しく命令してから梶の左腕の刺青を剥がす作業を始めた。僕は手にした刃物で、まるでステーキにナイフを入れるようにして左腕に切れ目を入れた。そして丁寧に刺青ごと皮膚を剥がし始めた。梶はこの世のものとは思えない絶叫をあげたが、僕は作業に集中していたから奴の悲鳴を愉しむどころではなかった。僕はできるだけ綺麗に梶の左腕の皮膚を剥がさなければならなかった。僕は林檎の皮を剥くようにして梶の左腕の刺青を剥がした。大量の黒い蝶を彫られた皮膚は、梶の左腕から切り離されて地面に投げ捨てられた。
この刺青は後でおまえらと闘おうとしていた小野さんの墓に供えさせてもらおうと僕は思った。小野さんには彼女とともに闘うことを決めた人間の存在が必要だった。だから小野さんは僕に会い、僕の妻の話を聞き、小野さんがレイプされた話もした。小野さんは僕にレイプ犯の証拠となる刺青の写真を見せてくれた。だがその写真は小野さんの死後に彼女のスマートフォンから削除されていた。不可解な話だ。小野さんがわざわざレイプ犯に繋がる証拠を削除してからビルの屋上から飛び降りたというのだろうか。
「おまえ、小野さんを殺しただろ?」僕は梶に聞いた。「おまえらレイプ犯に対して徹底的に法的に闘おうとしていた小野さんはおまえらには目障りだった。特にリーダー格のおまえにとっては邪魔者以外の何者でもなかった。おまえは小野さんを自殺に見せかけて殺さなければならなかった。おまえはスマートフォンの証拠の写真を削除しなければならなかった。おまえには動機があり、その犯行計画を実行するだけの男の腕力があり、父親の警察署長の権力によって警察に捕まらない確証があった。おまえらが小野さんを殺した」
梶は苦し気にではあったが笑った。ひゃひゃひゃ、と無理に絞り出す掠れ声のような笑いが響いた。「誰が俺たちをチームの戦力外にしようとしたおまえの意志に従うと思う? おまえの妻の女のモノだがよ、大して良くなかったぜ。ガバガバで緩み切ってて、まるで中年女のモノのようだった。その程度の女をレイプしたくらいで文句を言われてもな。ひゃひゃひゃ」
「妻はこの世で最も魅力的な女性だ」僕はナイフで梶の両目の眼球を突き刺した。そしてナイフをこねくり回して梶が二度と視力を取り戻すことができないようにした。眼球を潰した後で、僕は梶の男性性器を外に出し、ナイフで根元から切り取った。梶は痛みに絶叫した。病的なまでのS男が激痛に叫び声をあげたところで僕の心には同情は湧かなかった。この梶というレイプ犯は女たちに過剰な痛みを与え続けてきたのだ。妻が言ったように梶の男性性器は小さかった。それは小学生のモノくらいの大きさしかなかった。
「俺は現在、警察から逃亡している小田原の殺人鬼だ」遅ればせながら僕は自己紹介をした。「梶、おまえの中途半端にいいお顔がそもそもの犯罪の原因かもしれないな。おまえは自分の顔に自信を持ちすぎていて、自分の顔に屈服しない女に対して怒りを覚えるのかもしれない。それはおまえの男のモノと同じく、ちっぽけなプライドにしか俺には思えないが」
僕はバーベキューの焼き場に置かれていた灯油缶を手に取った。そして灯油缶を傾けてとくとく、とやわらかな音を立てて梶の顔面に灯油を浴びせた。
「これからおまえの顔面を焼いて人肉のバーベキューをしようというわけだ」僕は洒落たことを言ってみた。「愉しみだとは思わないか。人間は顔面を焼かれた時にどんな反応をするんだろうな」




