僕は犯罪者への復讐を始める
僕は車に乗って家に帰った。
アパートの居間は冷たく静まっていた。妻は今日も酒を飲んでいる。僕の人生において暖かな家庭の夢は遠いものになった。結局、我々夫婦はレイプ犯罪という壁を乗り越えることができなかった。我々は、赤ん坊を作れなくなったという現実を飲み込むことができなかった。
「あのナンパして来た三人組の男がやったのよ」妻は言った。「どうして警察は動かないの?」
それはレイプ犯の親父が警察署長だからさ、と僕は頭の中で答えた。レイプ犯どもは調子に乗っているんだ。奴らは憎たらしい女をレイプして家庭の段階から潰してしまう。そしてそれを嘲笑するのが奴らのやり口なのさ。我々は我慢しなければならないと思うか? この地域の襲われた他の女たちと同様に、俺たちは奴らの力に怖れ、縮こまって生きなければならないと思うか?
僕の心の中に梶、村田、市井川への憎しみが憤怒となって湧き上がった。僕は奴らの中の一人が妻の顔面を靴の裏で踏みつけたことを思い出した。そしてその靴裏をゆっくりと動かしながら力をこめたことを思い出した。男の靴裏の圧力は妻の顔をひどく歪ませた。
「何だ、思ったよりブサイクじゃないか」男は言った。「おいおい、やめてくれよ。こんなブスを攫うのに俺たちは計画を練ったっていうのか」
僕は妻が受けたレイプ犯罪についての一つ一つを頭の中でたどった。僕はそれらの記憶を頭の真ん中の、中枢と言ってもいい場所に持ってきた。そして僕は自分の中の憤怒にさらに激しい炎を焚きつけた。炎というのは燃える素材と酸素と熱がなければ火を上げることができない。僕は自らの意識の中で憤怒の感情の中に燃える木材を入れ、酸素を注入し、熱を送り続けた。僕は自らの内にある怒りに火を点けた。僕の中で炎はごう、と音を立てて激しく燃え盛った。
僕はこの二か月の我々夫婦の我慢について思った。僕は岩手オーシャンズが試合に勝つために梶と村田と市井川への怒りを封印したまま試合を熟してきた。それでチームは勝ち星を挙げ続けた。だがいま考えるべきことはチームの勝利ではないと僕は思った。僕がいま考えるべきことは自らの怒りの感情を表に出して発散させることだ。自らの怒りに目を向け、その怒りが決して否定的な負の感情ではないことを確かめ、そして僕は自らの内に誓わなければならない。あの三人のレイプ犯を殺さなければならないと。そうだ、あの三人を殺すのだ。この『僕の手によって』。
僕は試合の遠征先の名古屋に着いた。
僕は駅前のホテルを出てトヨタ製のレンタカーを借りた。愛知県にはトヨタの車が氾濫しているなと思った。これも地元愛というものだろうか。僕は名古屋市役所の屋上の、まるで天守閣のような奇妙な造りの屋根を見上げながらレンタカーを走らせた。
僕の車は市内を出て山道を走り、郊外のバーベキュー場に着いた。チームメイトの話では、梶と村田と市井川がこのバーベキュー場に遊びに来るという。もちろんプロ選手にも息抜きは必要だ。だがまるで気楽なお祭り気分だなと僕は皮肉に口を歪めた。
僕は途中の山林に車を停めてから車を降りた。ジーンズのポケットに殺人の道具として用意したナイフが二本、それに首を絞めるためのロープが一本と青酸カリの入った小さな薬瓶。ナイフもローブも毒薬も、いつも殺人をする時に使う手慣れた小道具だ。
これからレイプ犯を殺すのだ、と僕は思った。そう思うと怖れとも興奮ともつかない震えが全身を走った。僕はわくわくして自分の殺人の衝動を抑えることができない。これもいつものことだ。
僕は歩きでバーベキュー場までゆっくりと歩いた。急ぐなと僕は自らに命じた。急ぎ過ぎると後で警察に捜査の手がかりを残すことになる。今は思念を研ぎ澄ましてゆっくりと行動すればいいのだ。
やがて山林の開けた場所にレイプ犯の男たち三人の車が見えた。平日の夜七時だった。僕は他に客の姿がないことを見て取った。
梶、村田、市井川の三人は男だけで肉とソーセージとトウモロコシを焼いていた。おいおい、野菜をもっと摂れよとアスリートとして僕は食事管理について思いながら奴らに近づいた。敵は三人。一人一人、ばらばらに逸れさせてから殺さなければならない。僕はそれをやり遂げなければならない。
僕はにこやかな笑顔を浮かべて三人に近づいて言った。
「よう、ちょうど近くまで来たんだ。寄っていくかどうかちょっと迷ったんだがな。でも俺たちは同期のアスリートだし、この間、梶には失礼なことを言ってしまったからさ。俺も反省したんだぜ。岩手オーシャンズは、これからは互いのミスを庇い合う仲良しの集団にしなきゃいけないってさ。がりがりと勝ちだけを目指すのもどうもな。昔のチームに戻すのもいい考えだ。この計画をどう思うよ?」
三人は僕の顔を見つめて黙り込んだ。肉とソーセージとトウモロコシを焼く手を止めて僕を見ている。暫定的な沈黙が訪れた。僕は奴らに歓迎されていない。それは知っている。僕は続けた。
「このバーベキュー場の持ち主が君らの車を動かしてくれって言ってたぜ。君らの車はトヨタの白いバンだろう。あの車が月極め契約者の駐車場に停まっていて苦情が来ているんだと。急いで動かしてくれってさ。俺も持ち主に頼まれて伝えに来たんだ」
僕は嘘をついた。三人組の一人が駐車場に向かって歩き出した。レイプ犯の中の村田だ。鼠顔の村田、と僕は思った。まずは最初のターゲットは村田かと僕は内心で冷酷に笑った。




