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戦況は終始ケテル軍優勢。

 やはり勇者の存在は大きいらしい。


 一方のコクマ軍も最後の力を振り絞っていた。

 ただでは死なないという気迫は凄まじい。


 手が震えている。


 先日のリンの言葉が頭から離れない。

 誰も好きで戦っているわけじゃない。

 当たり前の事だった。


 自分の生まれた境遇。

 日常的に受けていた使用人や兄たちから受ける嫌がらせ。

 自分がこの世で一番哀れで正しいと思っていた。


 でも、そんなことは決してなかった。

 もちろん彼女が哀れだと言いたいわけじゃない。

 いかに自分の考えが浅はかだったかを知ったのだ。


 アンクルはゆっくりと腰の剣を引き抜いた。

 そしてまたがる馬の手綱を強く引っ張った。


「王子!?」


 無策で敵兵の波に突っ込んで、がむしゃらに剣を振るった。

 気付けば全身傷だらけ。

 アンクルは敵兵の人並みの中で孤立していた。

 そこに現れたのはスミスだった。


「勝手な行動をするな!」

「スミス兄さん……」

「お前は下がっていろ!」

「はい……」


 結局アンクルにできたことはほとんどなかった。


 剣先が皮膚を裂き、肉を切る感覚。

 飛び散る血しぶき。 

 敵兵の後悔と苦痛に満ちた顔。

 

 今の自分にできることは、自分の非力さを理解して、その光景を鮮明に覚えておくことくらいだった。

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