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コクマ王国の兵を迎え撃つべく、スミスはフール平原に陣を敷いた。
「おい、お前それ酒か?」
「ああ、冷えてねえが、これはこれでアリだ」
「ちょっと俺にもくれよ」
兵士たちは相変わらず緊張感に欠けていた。
それも全て、勇者という絶対的な存在があったからだ。
どうせ自分たちが戦わなくても、勇者がいるから何とかなる。
そう思って疑わない。
開戦の合図は唐突だった。
雄叫びが平原に響き渡る。
地面が揺れたように感じたのは錯覚か。
アンクルのまたがる馬は微かに落ち着きがない。
少し離れた場所で怒号や悲鳴が聞こえる。
あの方角に彼女がいるのだろうか。
あんな落ち着いた少女が戦っている姿を、アンクルは想像できずにいた。
程なくしてコクマ軍の姿が視界に入った。
すると次の瞬間、弓矢が風を切る音が無数に響いた。
飛来した弓は馬の首に直撃。
馬の悲痛な鳴き声。
そのままアンクルは落馬してしまう。
迫りくる敵兵の波。
気の抜けていた兵士たちの顔も、流石に真剣な色に変わっていた。
目の前で繰り広げられる命のやり取り。
アンクルは腰が抜けて動けなかった。
敵兵の剣が目の前に迫り、死を覚悟した瞬間だった。
目の前を駆け抜けたのはリンだった。
彼女は迷わず剣を振り下ろし、敵兵を屠っていく。
「勇者だ! あいつを狙え!!」
弓の先が一斉に彼女に向いた。
放たれた無数の矢が、無残に彼女の全身を貫く。
しかし彼女が止まることは無かった。
「あれが……勇者」




