91.現実に帰り
〜前回のあらすじ〜
孤児院にいた頃の夢をずっと見ていたアミ。やっと現実に戻ってきます。たしか……ドラゴンを倒して、魔石を手に入れたんだよね。
『おい、アミ、アミ!』
ん?タウの声?
夢から覚めるか、とは思っていたが、まさかタウから来るとは。私の、元いる世界、未来のタウだ。
そう思った瞬間、意識が覚醒する。
視界に入るのは、魔王城。
私はもう、孤児院にいないんだ。
それを思い出して、苦しむ必要はない。…苦しみの部分しか見ていないのは意味がわからないが。
そんなくだらないことを言っていられる、この居場所が、私にはあるんだ。
『ん…おはよ』
『ああ、おはよう』
あれは、全部夢だ。
久しぶりに見た、孤児院の夢だ。
「さて、起きますか」
時計を見ると、7時だ。
ちょうどいい。先に朝食を作ろう。
キッチンに降りていき、朝食づくりを始める。
もちろん誰も起きていなかった。
小1時間後、朝食が完成した。
簡素なものだが、問題ないだろう。完成したのは、ちょうど、リゼが降りてきたところだった。
「あ、リゼ、おはよ。シン呼んできて」
「うん。あと、言いたいことがあって…」
「ご飯食べながら聞くよ」
そう言うと、リゼはシンを呼びに上に戻っていった。
「ったく…まだ眠いって言ってるじゃん」
シンが起きてきた。機嫌が悪い。朝に弱いからなぁ、この兄弟。
「はい、朝ご飯できてるよ。ほら、座って」
いつも通り、朝は過ぎていく。
「「「いただきます」」」
「それで、私の言いたいことなんだけど…」
朝食を食べながら、リゼが言い出した。
「ギルドに緊急の依頼が入ったらしくて……私、今日1日国外に行かないと行けないんだよね…」
話の内容に追いつくどころか眠そうなシンは、何も聞いていないのか反応がない。
私が聞くしかないようだ。
「どこに?」
「アーヴェキニスア」
どこやねん。
……口調が乱れました。ほんと、どこ。
「リゼ、それってどこ?」
そう言うとリゼは呆れたように話す。
「魔法学院で習ったでしょ…。ウェツギがこの国の北にあって、アーヴェキニスアはさらにその北」
うーん、もうひとつ知らない国が出てきた。わからなすぎる。無理、地理は無理。
「何をしに行くの?」
国の場所を聞くのは諦め、私は目的を聞く。
「なんか、王が国賓として招待されるにあたっての情報がほしいらしくて……以前はどう招いていたのか、警備は、とか。ほら、私のスキルって最適でしょ?だから情報だけサッと渡してサッと帰って来るの。1日でいいと思うけど」
なるほど。スイウさんが、ねぇ。
「じゃあさ、アミ。僕らはウェツギで観光でもしよっか。ちょうど通るでしょ?」
いつの間にか覚醒していたシンから提案される。
「いいかも!ウェツギって何があるの?」
私が聞くと、リゼがちょっとまってて、と言ってから黙った。スキルを使っているのだろうか。
私はその間にご飯を食べよう。
黙々と食べていると、リゼが調べ終わったようだ。
「ウェツギは、観光に特化した国。海に面した、温暖な国家。国全体に漂う自由の雰囲気は今の王による政治の賜物。お土産、食事、ともに文句無し。また景色もよく、朝日も夕日も海と絶妙なバランスでマッチするため、それを目当てに訪れる人もいるんだとか」
おぉ、情報ありがとうございます。
「私、ご飯も食べたいし、お土産も買いたいし……夕日も見てみたい!」
欲張りすぎたかな……?
「うん、いいんじゃない。僕もその案でいいかな。じゃあとりあえずご飯を食べて、魔石をはめてから行こう」
「「はーい」」
素直に朝食を食べ、片付けも終わらせた。さぁ、魔石はめにいこう。
「時間がない。走るよ!」
リゼが走り出す。
「焦りすぎたって意味ないよー」
シンも走ってついていく。
……置いてかれた!
「…置いてかないでー!」
私も走るはめになった。なってしまった。
「はぁ、はあ…着いた」
地下3階、あの扉の前だ。
「よし、入るよ」
扉を開ける。
そこにあるのは、前と変わらぬ部屋。
「せっかくだし、貢献者にはめてもらおう。今回は、タウが一番頑張ったよね…でもまあ、アミ、どうぞ」
タウの功績なのに、悪いなぁ。
まあ、仕方がないか。
「えいっ」
木でできた書見台のようなものの前に立ち、ドラゴンから落ちた魔石をはめる。ぴったりだ。
数秒、赤くぴかっと光った。
そして、元からそこにあったかのようにきれいに馴染んではまっていた。
「これで良し。さて、行きますか、ウェツギへ!」
「いや、ウェツギはおまけなんですけど…私の依頼が最優先だからね!」
シンの言葉に、リゼが真っ先に突っ込んだ。




