9.新情報
先程と同じ門を通り、街へと帰ってきた。
シンは、コンパスをちらりと見る。
「行き先は…でも、帰らないといけない時間…」
たしかに、空の色は、青から赤へとグラデーションができ始めている。
「よし、帰ろっか。前と同じ宿でいいよね」
シンは、私たちに提案する。
「「賛成で」」
私とリゼは、同じように答える。
思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
いつの間にか、息があってきてる気がする。
「暇だぁ…。暇すぎる」
私は、宿にある食事場…の横のフリースペースのソファーで、木の天井を見上げながらつぶやいた。
もうご飯も食べ終わったし、とにかくやることがない。
「シン、魔王城についてなにか知ってることとかないの?」
なんか面白い話でもないかとシンに話しかけてみる。
するとシンが一瞬、困った顔になる。
「まあ、あるっちゃあるけど…タウに怒られないよね…。怒られてから考えるかぁ…」
気になるし、聞いてみるか。
『いい?』
『まあ別に問題ないが…内容によってはだめなこともある』
つまり、実質良いということだろう。
「大丈夫だと思うよ!知らないけど!」
暇つぶしができそうだ。
シンは、思い出しながらゆっくりと話し出す。
「魔王…タウは、僕の兄だ。双子なんだけどね。あいつは一線を越えちゃったんだ」
一線?なんだろう。
私が疑問を抱くにも関わらず、シンは話し続ける。
「12歳のころの話だ。あいつの成長が止まったんだ。身長が…130cmくらい?ずっとそのまま。だから、僕はすぐに追い越しちゃったんだよね。まあ、そういうことで150cmくらいのアミでもそのローブが着れてるんだ」
シンの話からすると、これは…。
私は自分のローブをみて、驚愕した。
シンは、淡々と話す。
「でも、その代わりにあいつは莫大な魔力と、4つの属性を昔から持っていた。なんか鎖みたいな腕輪を昔から右腕につけてたけど、それが契約の証だったのかな」
へぇ。でも、ここで疑問が湧いた。
「普通の魔力ってどれくらいなの?」
「大体250くらい。あいつはたしか、750だったから、明らかに異常。しかもさ、属性の数も異常だった。4つ。過去最高記録だったよ。火と水、光と闇。しかもあいつは使いこなしてたからなぁ。勝てるわけねぇじゃんかよ…」
シンが荒れ気味になった。気持ちはわかるけど。
そして、話を次いだ。
「あいつもスキル持ちでさ。????ってやつ。つまり、アミと同じ」
わぁ…やっぱそうなんだ。
スキルの数が合わないなぁと思ってはいたのだ。
ここで答えがわかるとは。
「????ってさ、持ち主によって特性が変わるんだよね」
リゼが口を挟んだ。
じゃあ、私のは…?
そんな疑問が湧くが、私にわかんないのに他の人がわかるわけないよね。
タイミングを見計らい、シンが話し出す。
「続けるよ。タウのスキルがまた強くてさ。昔読んでた本に影響されたのかな。名前は忘れちゃったけど。武器を変化させられるスキルだ。形を変えることもできるし、魔法を纏わせることもできる」
ちなみに、
『冒険譚〜旅は刀と共に〜』
とかいう伝言が飛んできたが、正直題名はなんでもいいため、無視していた。
というか、なにそのスキル。強い。って感じだ。
「名を、〈変幻自在〉」
へんげん…じざい…。名は体を表すというかなんというか…。私のスキルにもあるのかな。そういうの。
「しかもさ、あいつはまたレアでさ。詠唱を使うんだよ。煽ってるつもりなのか知らないけど」
『ちげぇよ。魔力消費が全然違うからだよ』
またタウが口を挟む。
無視しようかと思ったけど、これは気になる。
『ん、どういうこと?』
すると、タウは少し嬉しそうに、
『基本的に、属性によって使う魔力は決まってる。ただ、個人差はあるかもしれないけど。俺は、
火魔法…14 水魔法…16 風魔法…12
土魔法…22 毒魔法…20 光魔法…32 闇魔法…28だったかな。無詠唱の場合、+30ずつだ。多分』
と説明してくる。
よく知ってるなぁと思いながら、あんまり私には関係ないか、と聞き流していた。
『つまり、消費を抑えるために詠唱をしてるってことだ。勘違いするな』
へぇ…まぁ、伝える気がないから、誤解されたままだけどね。
まあ、信じられるか微妙っちゃぁ微妙…。
というか、なんか…めちゃくちゃ眠い。
なにこれ。意識がとろけてくる。
「ごめん。ねる…」
最後の言葉がこれって、ちょっと嫌かも。
でも、それよりも睡魔に抗うことが難しすぎた。
ここからは、聞いていなかったけど。
「寝る…というよりさ…」
リゼが、怪しむように言う。
「だよね。僕も思う。でも、害意はなさそう」
「そっか。じゃあ、一旦放置でいいかな」
「うん。多分、自ら死ににいくようなことはないと思う」
そんな話をしていたらしい。