85.アミの夢
〜前回のあらすじ〜
無事、急に酔っ払っていたタウから事情を聞き終わったアミ。もう今日は寝ます!
夢を見た。
5年前の話だった。孤児院にいたころの、そして1番大変だったころの。
みんなに話したからだったのかな?
完全なる悪夢だった。
悪夢でしかなかった。
「なぁ、アミ、今日はパン屋行く日だよ?早く起きろよ」
私は目を覚ます。そこには見覚えのある少女、ラゼイがいた。今日も朝日を反射した薄い金髪が輝いていた。緑の瞳はキラキラと光っている。
対照的に、私は眠すぎてどんよりとしていた。
「今何時よ…」
「7時だから!早く行こうよ!」
引っ張られて私は起きた。
孤児院での朝食後、外へと出かける。
ラゼイがパン屋のドアを開く。
チリン、と鐘が鳴る。
「おばさーん、パンの耳ください!」
ラゼイが元気よく言う。
「わかったよ。ちょっと待ってな」
おばさんは奥に行った。
私たちはその間に今日の予定を考える。
「ねーアミ、この後さ、森行かない?ちょっと戦いたい気分でさぁ」
「いいよ、ラゼイ」
ここの孤児院では、外に行くのは基本的に自由だ。ただし、持ち帰ったものはすべて職員に渡さないといけない。
つまり、森で戦って、素材を売ってお金を持って帰ったとしても、職員の給料のかさ増しになるだけだ。でも、渡さなかったことが見つかったら捨てられるだけ。だから私たちは、もったいなくて渡すことにしている。
ちなみに、12時、15時には帰らないと、それぞれ昼食、おやつが他の人に渡ってしまう。
朝食後…8時から、12時までが実質的に動ける時間帯だ。
「はい、今日は少し少なめ。ごめんね。じゃあ、元気でね」
おばさんが送り出してくれた。
ここは、孤児院から結構多くの人が来るため、おばさんは優しい。
外に出てから。
「アミ、森行くぞ!」
また私はラゼイに引きずられて森にいく。
いつも来る、南の森だ。
ここには、アンデッドが多く出る。
森に入った瞬間から、勝負は始まっている。
「ラゼイ!来てるよ!」
近寄るアンデッドに気がついた私は、ラゼイに忠告する。私が倒しに行く?そんなことはできない。
私は荷物持ちのようなものだ。戦うなんて、できもしない。
「わかってる!それっ!」
ラゼイが支給されている剣を振るう。
魔法なんて使えない。使い方さえわからない。だから、剣だけで戦う。それが私たち、孤児の戦い方だった。それに恵まれたことに、ラゼイは、剣が上手だった。
「よっし、じゃあ奥行こー!」
アンデッドを倒し魔石を拾い、さらなるやる気を醸し出したラゼイに、私はまた引きずられていった。
「あー、楽しかった!今は…14時か!」
森から出て、ギルドまでの道のりを歩いている。ギルドでは登録がなくても、安くはなってしまうが、買い取りをしてくれる。だから、今回のように昼食を逃してしまったときは買い取りのお金でご飯を食べるのだ。
大きなギルドの扉をラゼイが開く。
私は中に行かずに、待機だ。
時計を見ている人がいないと、困ってしまう。15時のおやつには帰りたいからだ。
ギルド内には時計がない。
12分後。
「アミ、行こう!」
さっき落ちた20個の魔石を買い取ってもらったのだろう。数枚の銅貨をもってきている。
ちなみに、朝もらったパンは私たちの軽食に消えていった。昼食には足りない。
「あー、疲れたねぇ。今日はアミも1匹倒せたじゃん!このまま成長しろー!」
ラゼイと話しながら、途中でご飯を買った。それをふたりで分けて食べて、その後、孤児院に歩いた。
それが最後の、最後の会話になるなんて知らないで。
孤児院に帰ってきた私たちが、大きな門の前にある時計を見ると、14時40分を指していた。途中から急いでよかったようだ。
門の前には、いつも通り職員がいる。
今日はアオ、というお姉さんだ。
「アミ、おかえりなさい。お呼び出しです」
……お呼び出し?え、なになに。
私は何かをやらかしたのだろうか。
早まる鼓動を置いてけぼりにするように、物事は進んでいく。
「すぐに来てください。ラゼイはおかえりの手続きをしてきてくださいね」
アオは、ラゼイを送り出した。
せめてふたりで、と思ったのだが、そう上手くはいかないらしい。
私は覚悟を決めた。決めるしかなかった。
「ラゼイ、また後で」
「うん、無事に帰ってくるんだよ」
私たちは視線を交わして、別れて孤児院に帰っていった。




