81.帰ろう
〜前回のあらすじ〜
私の過去の話を大方し終えた。
もしかして、ここから質問攻めに……!?
「ん?ちょっと待って。スイウさんは…なんでスキルを持ってたの?なんで渡したの?」
リゼが聞く。情報が遅くない……?まあいいや。
「つまりあの人はきっと…タウ側なんだよ」
シンは考えがあるらしい。
またいつか、聞かせてもらえるのかな。
「続ける。そうして5年が経って、成人したらすぐに追い出された。そこからは、ギルドに仕事を探しに行って、こうなった」
まあ、これが私の人生の要約だ。
でも一応、言っておいたほうがいいよね。
「ちなみにスキルは…多分タウ。実体化に、話し合い。でも、他にもいろいろあるもんね…なんだろ?」
『さあな。ただでさえスキル????はわかりにくい。俺のも難しかった』
タウのはたしか…
『最後にやっとわかった、くらいだからな。基本意味がわからん。スイウはどうだったのだろうな』
さあ…。
「これで話は終わるけど…なんか聞きたいことある?」
「タウに聞いておきたい。今日戦ったドラゴンは、何?」
シンが質問をした。私がタウと話せると、気づいたのだろう。
『あー、500年ほど前に俺が黒龍の元に行ったときに引き連れてきたやつだな。だが、あれは前のものとは違う。実在した竜を、契約して正式な配下としたものだ』
なるほど?という感じだが、話を一応聞いておこう。
『だから魔石が落ちた。それだけだ。他には?』
私はその話をまとめて伝えた。
「どんなスキルなの?属性は?」
するとシンが矢継ぎ早に質問をする。
彼は聞きたいことが多いらしい。
『俺もわかっていない…と言いたいところだったが、わかってしまっているところもあるからな。……まず根本的に俺とアミの間には魔力差がある。よって普段は俺のほうがスキルに関する権限は強い。自分の魔力を使ってから相手の魔力を使う、という感じになるっぽい。そこから考えるに、俺とアミで3:1という感じだ。属性は、ふたりとも両方使える。どこかに重複はあるかもしれないが…まあいい。そんなもんだ』
おう。なかなか理解していたらしい。
ちなみに私は全然知らなかった。
自分も知らなかった事実をまとめて伝える。
「そっか。ありがとう。じゃあ、帰ろう」
「そうだね。帰ろ!」
私は受け入れられたと思ってもいいのだろうか。
これで良かったのだろうか、これからもいていいのだろうか。
そんな会話をタウとしながら、魔法陣へと歩く。
結構部屋が広かった上に、遠くにあったため存在感が薄かった魔法陣に踏み込んだ。
次に目を開くと、そこは外だった。
後ろを振り返ると、崖がある。
入口のところだ。
「帰ってこられた…!」
「そうだね…おっと」
シンが、近くに来たスライムを倒してくれた。シンがいないと私、すぐ死にそう。
「こっから歩きかぁ。…アミ、転移って…」
あ、なるほど。
「いいね。やるよ。手、繋いで」
手を繋ぐ。転移魔法を使う。
着いたのは魔王城の目の前。ぴったりだ。
「おぉ、精度上がってるよね!」
『そうだな。よくやった』
タウが褒めてくれた。
まあ、嬉しい。
『今日も泊まるのか?もう良くないか……?』
これは、泊まってもいいということだな、たぶん。
「泊まっていいってよ」
「ありがとう。じゃあ、行こうか。あ、罠の解除しといてね」
シンがそう言うと、仕方がないという顔でタウが指を鳴らした音が聞こえた。
罠は解除されたようだ。
普通に疑問なんだけど…
「ここのヒエラルキーってどうなってるんだろ」
「うーん、その時のノリとかじゃない?あと、あまりに嫌な時はブチギレそう。お互いに」
うわぁ。想像に容易い。
リゼの考察は案外合っているのかもしれない。
シンは部屋に帰って、何やら魔導具を作るそうだ。
入り口に取り残された私に、リゼがこうやって提案してきた。
「私たちは…夜ご飯でも作る?」
嫌な予感しかしない。
いや、大丈夫かもしれない。一応魔法学院では作れてたし……?
でも、お腹も空いてきたし、作ったほうが良さそう。
「じゃあ、やろっか」
私は覚悟を決めた。
2階まで上ってきた。キッチンに到着する。
「じゃあ私が仕切るね」
先手必勝。
私からそう提案することにより、最悪の自体は回避する。
「わかった。じゃあ私は何すれば良いの?アミ先生!」
先生、と呼ばれるのは違和感が大きいが、まあ料理の主導権が握れるからいっか。
「今日は、唐揚げとパン、あと野菜スープにしようと思ってるんだ」
リゼでもできそうな仕事…。
パンを温めるのは…いや、焦がしそう。
唐揚げは…味付けならできるかな。
野菜スープは論外。絶対やばい。
「そうだね。唐揚げの下味をつけておいてよ。やり方は…そうだね。この紙に書いておくから、見て頑張って」
「わかりました!できたら報告します!」
書き終わった紙を渡した。
よし。これならきっと大丈夫。




