80.アミの話を
〜前回のあらすじ〜
タウに助けてもらいました。でも、私とタウの関係をどう説明しよう……。
「タウ、ありがとね。じゃあ…」
タウはスタっと戻って来る。
「そうだな。それじゃあ……」
「待て、タウ」
シンが、タウの手を掴んだ。引き止められた。
仕方がないという顔をして、タウは座る。
「俺、あと3分で帰る予定だから」
「そっか。じゃあ僕の話を……」
「あ、魔石取っておこう…」
話始めたシンを無視して動き出したリゼに言われて気づく。
「あ、ほんとだ!魔石忘れてた!」
魔石は回収された。シンは咳払いをしてから話し出す。
「でもその前に、お前の話を聞くべきか。さぁ、弁明を、タウ」
「私は超賛成」
リゼは笑顔で手を挙げながらそう言った。
正直私はどっちでもいい。
でも、私もタウのことを話す覚悟ができた。
だから、このタイミングで話したい。
「賛成」
「え、アミまでそっち側なのか」
タウには悲しそうな目で見られたけどね。
結局シンに連行されていった。
真ん中らへんに4人で集まり、輪を作る。
念の為タウは氷で拘束中だ。
「じゃあタウ、話してもらおうか。今は一応危害加えないんだね?」
タウは少しすねている。
だが、少し楽しそうだ。
なんか、掴みどころがないよね。
優しいかと思えば、残酷で。
寂しがり屋かと思えば自らの孤高で。
漫画とかの影響なのかもね。不思議すぎるから。
まるで、信条に基づくときとそれ以外があるかのように感じてしまうんだ。
そんな考え事をしている合間に、話し合いは始まる。
「今は危害を加えるつもりはない。俺は嘘をつかないと決めている」
「私が保証する。大丈夫」
私はタウを援護する。彼なら大丈夫、そう信じて。
「……俺が話をするのは、全員がそれに見合う話をしてからだ……というわけでアミ、最初に話せ。今がちょうど良いだろう?」
そうだ。そうだね。
リゼは、
「私も、アミのほうが今は大事だと思う。アミのことは早めに知っておいたほうがいい」
と賛成してくれた。
「じゃあ、僕はまた今度…あっ、そうだ。次のダンジョンでリゼが話して、僕はその次に話すよ」
なるほど。それはいい。
「じゃあ私の話を始めるね…」
でも、やっぱり心細い。
すると、タウが手を握ってくれた。
いつの間にか氷は溶かしていたようだ。
「大丈夫だ。大丈夫。俺が帰ってからも、うまくやれる、そうだろう?」
そう言ってタウは消えていった。
やっぱり、優しいんだよなぁ。
「私が孤児院の出身なのは知ってるよね?」
『それを知らないやつがいたら論外すぎる。続けて良いぞ』
おそらく白い部屋に戻ったのであろうタウは、外野から話しかけてくる。当たりが強い。
「……最初はみんなと同じだった。なんにもなくて、ただただみんなと一緒に、楽しく毎日を過ごす、みたいな。まあ、そんなに生活水準は良くないけど」
「孤児院には補助金はあるはず…」
シンが言う。
「実際、あってないようなものだよ。ほぼ職員の贅沢品になってる」
「そっかぁ…次から報告をさせる…いや、少し脅しておく…」
シン怖いよ!
「まあいいや、続けるよ」
一息吐いてから
「でもある日、平穏は消え去った」
と、人生で最も残酷だったであろう話を始めた。
「私のもとに、院長が訪ねてきたんだ。あ、スイウさんね。それで、個室に通されてふたりきり。そして、彼はこう言ったんだ」
「君に、スキルを授けるって」
その言葉のあと、この空間は時が止まったかのように沈黙に包まれた。
数秒後、意識を取り戻したリゼが話し出した。
「えっ…つまり、スイウさんが持ってたわけ!?」
リゼはめちゃくちゃ驚いている。
シンはそういえば……というこ顔をしている。
「まあそこは置いておくね。で、もらったのがスキル????だったんだ。でも、その様子を見てた人がいてね…」
あ、この話題、無理かも。
手が震える。
『アミ、無理ならそう言え。他に方法はいくらでもある』
タウの優しさに甘えたい。とても、甘えたい。
でも、ここで踏み出さないと、この人たちにも置いていかれてしまうかもしれない。
そんな恐怖がつきまとっているんだ。
だから、今日、言うんだ。
「……あの場所は、そんなに環境が良くない。だから、引き取り先が現れたことがわかると、恨まれるんだ。なんでお前が…って。まあ引き取りではなかったけど…。院長直々、ということにはそれほどの意味があって、それによっていろいろあったんだ」
いろいろ、でまとめられるのがすごい。
便利だよね。この言葉。
でも、軽かったかのように思えてくるのは、嫌だな。
「タウが現れたのは、その後すぐ」
あの日は、とても寒かったな。
「私が部屋に籠もっていたら、話しかけられたんだ。だから、答えた」
どうした?と聞かれた。だから答えた。
寒いよ、苦しいよ、って。
「そこから、訓練した。どうせ、5年後には孤児院を出るだろうとわかっていたから、頑張って訓練した。職員になって留まる利点がなかったから。だから、鍛えた」
タウが鍛えてくれなければ今、戦えなんてしなかっただろう。




