75.最後の部屋と夕食
〜前回のあらすじ〜
料理をしているシンを放置して、魔王城3階の部屋を見て回ってます!
残りは奥にあったこの部屋だけだ!
最後の扉だ。
残したのは、廊下の正面にあった扉。ラスボス感が溢れている。
「なんか、正面の扉って緊張しない?」
「ふふっ、たしかに」
2人で重い扉を開けてみた。
中は、ただ広い空間だった。
床はフローリングで、壁は魔法がかけてある。おそらく、耐久性を高めるもの。ランプがたくさんあり、天井には窓があった。
でも、それだけだ。
「なんだろ、ここ。訓練場とか?」
「…ここ、知ってる」
えっ…。リゼが驚愕の事実を言った。
「いつ?なんで?」
思わず私が見つめたリゼは、目を大きく見開いていた。私は開いた口がふさがらない。
「私が小さい頃…ここで訓練してた。といっても、転移魔法陣で来てたから、知らなかった。そっかぁ。国経営だったもんねぇ、あの道場。使えるところは使ってたのかも」
国の持ち物のようになっていた、ということか。
それはどんな経緯なのだろうか。謎が多すぎる。
いや、今はまだいいや。
「そうなんだ…。でも、ここは部屋にカウントしないほうがいいよね?」
「まあ部屋数は足りてるし。大部屋を誰が使うかだけど……」
「もちろんじゃんけんでしょ!勝手に決めないでよ!」
リゼなら勝手に決めていそうで怖い。
あんな広い部屋、泊まってみたいに決まってる。
「わかった、じゃあとりあえず帰ろっか」
階段を降りて、2階に帰ってきた。
「シンー、ご飯どんな感じ…って、いい匂いしてるね。こりゃ大丈夫だわ」
リゼの言う通りだ。この階に来るとわかる。お肉のいい匂いが充満していた。
「ん、大体できてるよー。あとちょっと待ってて…あ、人手欲しいや、手伝って」
「「わかった!!」」
キッチンの方へと、2人で走っていく。
「えーと、アミは皿を3枚出しておいて…そこの棚に入ってた」
シンが指差した先は、上の方にある戸棚だった。
「はーい」
下に踏み台が置いてあったため、借りた。
175cm近くあるシンなら届くかもしれないが、私には届かない。
「リゼは、机拭いてきて」
「おっけー、任せといて」
リゼは布巾を持って、ダイニングの方へと駆けていった。
「あ、アミ、次は米をそこのやつに入れておいて」
シンが次に指差したのは、お椀のようなものだった。
それぞれの柄が違うのは、元はタウが一人暮らしだったからだろう。
「米ってこれ?これをすくって入れればいいってこと?」
おそらく炊いた後なのだろう。最初とは全然見た目が違い、驚いた。
「そういうこと。熱いから気をつけてね」
湯気がぼうぼうと出ている。
大体3等分くらい…いや、シンのやつだけ大盛りにしておく。
「机拭き終わったよー、次は?」
キッチンに帰ってきたリゼが言う。
「米を机に運んでおいて。アミ、トレイに乗せて」
近くにあったトレイに乗せた。
「はーい」
リゼが運んでいった。
「あとは…うん。サラダと肉、運んでおいて。肉は一人一皿ね」
「いや、別にわかってるよ?」
「いやぁ、たまに自分の分多めに取っておく人がいるから…リゼとか」
納得した。リゼならやりかねないかもしれない。
「よし、わかった」
ダイニングの方へ運んで行く。
ちなみにここの造りは手前から階段、リビング、ダイニング、キッチン、それから階段があって、2.5階くらいにお風呂という感じだ。3階からも来れるらしい。
ダイニングに着いたとき、リゼは既に着席していた。
四角い机に、椅子が3つある。
「椅子なんて3つもあったの?」
一人暮らしだっただろうに、意外だ。
「あったよ。何でだろうね」
「王が入り浸ってたからね〜」
シンの声だ。ちょうど来たようだ。
「王が入り浸って大丈夫なの?」
「昔は今よりもうちょっとホワイトだったからね。王とは仲が良かったからね。まあこれにはちょっとした事情があるけど…また今度でいっか」
雰囲気を切り替え、シンが言った。
「それより、ご飯食べよ!」
「「「いただきます」」」
今日の献立は、サラダとお肉とお米。
野菜から食べると健康にいいと聞いたことがある。だからサラダから食べてみる。
「ん、野菜だけじゃない!なにこれ?味付け?」
「あぁ、それね。ドレッシングだよ」
私は知らなかったが、他2人は知っているようだ。
リゼがなんで知っているのかと聞いたら、
「シンがよく使ってた」
と返ってきた。
「美味しいからね。決して、僕が生で野菜が食べれないとかでもなくて…」
うーん、怪しい。
「まあ美味しいからいっか」
次は、お肉を食べてみようと思う。
サラダは少し残してある。後で食べたい。
「あ、味付けがいい!」
口の中に入った瞬間、タレの芳醇な甘みと少々の辛みが混ざり合っていた。しかも、その奥にはお肉の美味しさが詰まっている。
「だよね〜。肉がいいのもあるけど、美味しい」
見ると、リゼもお肉を味わっていた。
「米と一緒に食べると美味しいよ」
そうシンに言われたが、まずはお米だけで食べてみる。わからないものでこのお肉が台無しにされたら悲しすぎるからだ。
「甘い…もちもち…不思議な感じ。でも美味しい」
お肉と合う、という言葉の意味がよくわかった。これはきっと美味しくなる。
というわけで早速試してみる。
「ん〜!これは美味しい!レシピ教えてよ」
「また機会があればね。まずは魔石集めに行かないと」
シンが真面目な顔で言う。そうだった。雰囲気にのまれて楽しく思っていたが、目的は違う。
「わかった」
次はみんな黙々とご飯を食べる。
ただ、その沈黙は決して悪いものではなかったはずだ。




