73.黒龍の居場所
〜前回のあらすじ〜
コンパスが指していたのはこの部屋だった!
リゼが魔王に喧嘩を売って殺気を浴びて苦しかったけれど、なんとかなりました!
ここで一度会話を切る。
タウもそれを察して、話を進めてくれる。
「これについて説明する」
書見台のようなものを指差す。
「これは、魔石をはめるものだ。すべてはめて魔力を込めると、転送する。場所としては…いや、これはいいか。この先に異世界から来た黒龍がいる」
あの依頼の!
「そのはめる魔石だが、特別なものがいる。それらが採れるのが、このコンパスの指し示す先だ」
そう言ってタウが取り出したのは、3つのコンパス。
「強いが、俺にはちょっと物足りない、そんなレベルのやつらだ。そいつらの魔石をそのままはめればいい」
なるほど。
ここで、タウが殺気を解く。
「質問はあるか?ないな。それでは、また今度会いましょう……いや、ちょっと待てよ。お前ら、今何時だかわかるか?」
「調べる…あ、夜だ」
タウに実質負けて意気消沈したリゼが調べてくれた。
あの毒で相当な時間がかかっていたようだ。
「夜かぁ。できれば外出たくないなぁ」
「ということで、よかったら泊まっていけ」
…え、マジで?
「うーん、僕は別に一回泊まったことあるしいいんだけど…」
あるんかい。
「私は設備が整ってるなら別にいいよ。こいつの家っていうのが少し嫌だけど」
「あ?そこに文句あんのか?」
リゼもいいらしい。タウが少しキレ気味だけど、まだ友達同士の冗談みたいな感じがある。きっと大丈夫だろう。……気のせいじゃないはずだ。きっと。
「罠はないよね?」
私が心配なのは、それだけだ。
泊まること自体はとても嬉しい。
「あー…解除しておくか」
タウが、パチンと指を鳴らす。
「よし、これで罠は実質ないぞ」
よし、安全だ…と思ったのだが。
「効果はいつまで?」
あ、たしかに。朝になったら罠だらけとか、さすがに笑えない。リゼ、ナイス。
「24時間だ。それまでには帰るだろ」
「じゃあ私も賛成」
「あとはシンがなんとかしてくれるはずだ。では、また」
タウが光となって消えた。
「じゃあ、僕が案内しようか。というか自分の家でもないのに案内って違和感…」
シンは前のコンパスを置き、次の3つのコンパスを手に取る。
「でも知ってるの、シンだけだし!仕方ないから頑張って!」
リゼは、テンション高めだ。いつものことかな。
『まあ、いざとなったら聞いてくれればいい』
確かにそうだね。
「とりあえず1階に帰ろっか」
はい。廊下歩いて、階段上って帰ってきました。
そんなに時間はかからなくて、認識阻害系の毒って怖いなぁと思いました。
「じゃあ…2階行こっか。主に2階にキッチンとか風呂とか。あとリビング。で、3階には部屋がいくつかあった。というかあいつ一人暮らしだからそんなに部屋持ってないから、見てから部屋割りは考えよう」
なるほど。城とは思えない設計だ。
城にしなくてもよかったのでは…?という感じだ。
「思ったより綺麗だ…掃除とかどうしてるんだろ」
リゼの疑問は、たしかに的を射ている。
「…僕がしてた」
「「…えっ!?」」
マジか。
「シン、懐かしいって言ってたじゃん!あれは嘘なわけ!?」
「そーだ!!アミの言う通りだ!」
シンは困ったような表情になる。
「えっと…掃除って言っても、そういう魔道具であって中に入ってたわけじゃ…」
あ、そうなんだ。
「どういうやつ?」
「入口にあったよ。魔石を闇魔法で加工してあるだけだから、気が付かなかったかもね」
うーん…魔石…あった気がする。
「どれくらいの頻度で?」
面接官かのように、質問をリゼが始めた。
付き合っていたらずっと話しそうだ。
なのでとりあえず2階へ上る。私が歩き出すと、ふたりともついてきてくれた。
2階に上がってすぐ、リビングがあった。
「週一くらいで行ってたね。魔力は…どれくらいだろ?その時々によるけど、大体80くらい…」
結構使う。しかも頻度も高い。
タウのためにそこまでしてたのか。シンってすごいな。
「え、でも2週間くらいの討伐に行ったことなかったっけ?」
「王に頼んだ」
雑な扱いされてんな。王様なのに。
「ま、とりあえず座ろっか」
2人の話を聞き流しながら、私は座った。
「なんか…豪華だね」
私たちが座ったソファ、明らかに高そう。
ふわふわで、しかもまわりは金属細工。
しかも、天井にはシャンデリア。床はふかふかな絨毯。
「結構報酬はもらってたからね…」
ん?そういえば……。
「なんの仕事してたの?」
「高ランクなギルドの依頼を受けてた」
なるほど。納得。
「ギルドの依頼受けれるのか。あんなのでも」
リゼ、さすがにあんなの呼びは…。
『あの女、次会ったら殺す』
ほら!やめとけって…。




