63.ドラゴン討伐4
「ここのも…なかなか強そうだ」
転移し、森に着いた途端にシンがそう言う。
「次は私だよね…やばそうだったら助けてね」
不安になってきた。
えー、とりあえず行くことにする。
見えてきたのは、水色のドラゴン。強そうな気もする。感覚だけど。
「この色…水属性だよね。水に強いのって特にないし…他で頑張ろう」
よし、対戦お願いします。
まずは、ドラゴンが溜め技を始める。
「えーと、多分水だよね…防ぐ」
私は、水を凍らせて止めようと、氷魔法で冷気を辺りに蒔こうとした。
『止まれ!それは氷だ。火で対処しろ!』
え?タウ?
反射のように私は火属性の結界を張る。普段のものよりは弱いが、多少の緩衝材にはなる程度のものを。
意識が追いついたころ、眼前にあったのは氷だった。
タウの言う通りだったんだ。
「…マジか…。氷なのか、あの魔力反応で」
シンもわかっていなかったようだ。
「いっつ……」
危なかった。
氷を凍らせることはできない。最初の防御じゃ耐えられなかった。
『だから言ったのに…。回復できるか?……厳しそうだな。俺のほうから回復はできるはずだ。攻撃に集中しろ』
今回は…タウを信じてみようかな。
相手はブラフを張ってくるようなタイプ。
私だけでは、勝てる気がしなかった。
『回復』
体が軽くなった。これなら頑張れる。
「まずは炎を、ごり押しで通す」
無理やり、高温で鱗を溶かす。狙うは5000℃だ。
『かなり魔力を注いでいい。加減すると溶けない』
はい。
『そして、クナイに炎魔法を纏わせて……あぁ、手は水属性の結界で防御。そして、それを投げる。身体強化して行け』
はいはい。
言われた通りにやってみる。
高火力で溶かした、鱗。
身体強化し、炎を纏わせた3本のクナイ。
それらを同時に行い、私はドラゴンの間近へと行く。
そして、クナイを3本同時に投げた。首を的にし、それは壊れた。
「できた…!」
勝てた。よかった。
『待て。さっきので学んだほうがいい。リゼは反撃を受けていた。油断するな』
たしかに。
と思って注意していた直後、私の真上に氷柱ができた。明らかに今までのものよりも大きい。決死の一撃だ。
「わお」
全力で逃げてかわした。危なかった。マジで。
「アミ…よかった」
シンの安堵がこぼれる。
まあ、勝利ということで終わりますか。
「次のところ行こう!」
次のドラゴンは、市街地にいる。というか、森の中に居たのに、移動してきたらしい。
「僕の番だね。誰一人として死なせない」
そういった直後、シンが目の前から消えていた。ドラゴンの前にいた。
「君、わかるかい?僕との実力差が。わかったなら逃げるといい。それとも…」
そんなふうに説得しても、襲ってくるばかりだ。初手から相手は風魔法を使ってくる。
「衝撃波か…交渉の余地なしと。じゃあ殺すしかないね」
その5秒後、決着はついていた。
えっと…何が起こったのかわかんなかったんですけど。
光ったなぁと思ったら終わっていた。
……意味わからん。
「リゼ、あれどうなったの?」
「多分だけどね…いつもシンは火使ってるじゃん。でも今回は市街地。周りに被害が出やすいから剣にしたの。で、今のは技だね。身体強化して8の字型に切ってた。身体強化のレベルが比べ物にならないね。さすがだ」
へぇ…結局意味わかんない。いや、理論はわかったけれど、やっていることのレベルが意味わからない。
まあ、倒せたならばいいでしょう。
シンが帰ってきた。
「さぁ、帰りますか。リゼは報告?」
「そうだね。ただ、魔石が落ちてないから報酬は少ないし、不思議な案件として報告しないといけない……」
魔石……たしかに。確認すらしていなかったが、普通ならば魔石がでてくるはずなのだ。
「……とりあえず、帰る?」
シンは考えることを放棄したようだ。ならば私もそうしよう。
「賛成。くたくた〜」
本日最後の、転移魔法を展開する。
宿へ向かっている帰り道。
ちなみに、転移先は報告のためにギルド前だった。
ついていくかと聞かれたが、私は疲れすぎて動きたくなかった。
「私もう帰ってもいいかな?眠すぎて耐えられない…」
空を見上げていたシンが、気がついたようにこちらを見る。
「そっか…じゃあ、リゼはひとりで報告お願い。流石にアミをひとりにはできない」
「たしかに。こんなかわいい子をひとりで夜の街を歩かせるわけにはいかない」
え…、別に大丈夫だと思うけど…。
「というわけで、アミ、一緒に帰ろっか」
「多数決の原理だからね〜」
負けたぁ。仕方がない、多数決ならば。
というわけで、仕方がなくシンとふたり、宿まで帰ってきたわけだ。
「じゃあ、先にご飯食べて寝ていいよ」
シンは気遣ってそう言ってくれたが、それどころではない。
「いや、今日ご飯食べるも元気ない…寝る…」
かなり眠い。めちゃくちゃ眠い。
「そっか。じゃあ、おやすみ」
頭を撫でてくれた。意識が一瞬、覚醒した。
「いや、子供扱いしないで」
「ははっ、たまにはいいでしょっ」
私は自分の部屋に戻って寝た。




