59.ギルドの依頼
「それで、今日の行動についての提案なんだけど」
以前のようにフリースペースに集まったところで、リゼが話を始めた。
リゼが言うには、この2カ月の間にドラゴンが9体確認されたのだとか。だから、それを討伐しに行け、と。
「……え?ドラゴンが……9体?」
私は、呆然とするしかなかった。
一応、常識は持っているつもりだ。私の常識では、ドラゴンとはおとぎ話の中で、英雄に倒されるような存在なのだ。つまり、めちゃくちゃ強い。それが、9体もいるの……?
「うん、9体。ただ、同一個体もいるかもしれないね。ドラゴンともなると魔力を読み取れる人も限られるし」
いや、同一個体がいたとしても十分な脅威ですが…?
「黒龍が動き出したか、またはタウが何か仕掛けていたか……わからないな」
シンはそうつぶやいているが、私は難しいことは考えたくない。聞かなかったことにしよう。
「さっ、そういうわけで、ギルドに行くぞー!」
リゼに半ば強引に連れて行かれる形で、私たちはギルドへと向かった。提案じゃなく強制だったのか……。
ギルドの扉は鈴の音を響かせながら開き、リゼは慣れたように中へ入っていく。
「いらっしゃい、リゼさん。依頼を受ける仲間?」
カウンターにいるお姉さんは、すぐさまリゼに反応し
、話しかけにきた。
「そうだよー。イッシュを呼んできて」
そうやってリゼが指示をすると、何の疑問もないかのようにお姉さんは走っていった。どんな立場なんだ、この人は。
しばらくして、奥からイッシュが出てきた。大量の書類を持って。
「はいはい。これとこれと…ま、こんなもんかな」
そう言って積まれたのは30枚ほどの紙。
サッと目を通してみると、討伐依頼書と地図、それから討伐依頼に至るまでの経緯について書いてある書類だった。
それをリゼはシンに渡し、歩き出した。
「よし、じゃあ行こっか」
そんなリゼを、イッシュは引き止めた。
「一応ギルドカードだけ見せてもらってもいい?」
「いや、もう顔パスでいけるでしょ…?」
「規則は規則」
「面倒」
「だめ」
リゼとイッシュは、お互いに顔を見ながら、段々と簡素になっていく会話を続ける。
そんな中、私はとあることに気がついた。
「私、ギルドカード持ってない…」
あの日、カードを作ろうとしてギルドに行ったのに、諸々の出来事で結局作っていなかったのだ。
私がそう呟くと、ハッとしたようにイッシュは止まり、私のほうを向く。
「あ、じゃあ4級から…」
しかしリゼが止めに入る。
「いやイッシュ、ちょっと待って。アミは流石に4級じゃ無理がある」
「え、そんなに強いの?15歳くらいでしょ…?でも、まあ魔法学院の卒業生だし、それはそうか……」
ぴったり年齢当ててくるのやめてもらいたい。
「うーん、正直特級あげちゃいたいくらいだよ。まあ、手続き面倒だからいやだけど。1級でいいと思う」
「1級って…。まあ、いいや。リゼの言うことだから信用してるんだからね」
疑問に思った私は、こっそりとシンに聞く。
「シン、1級ってどれくらい?」
「頑張れば国滅ぼせるかなってくらい」
うーん、多分すごい。
「ちなみに特級は?」
「ひとりで5つくらいは国を滅ぼせる」
あ、やばい。
5分後。
「よし、できたよー」
そう言って手渡されたのは金色のカード。
「おぉ…ありがとうございます」
私は複雑な心境でそのカードを受け取る。
なんか……キラキラしすぎていて私に合わない。
「いーの、いーの。それじゃあ、頑張ってね。結構やばい依頼多いから」
え、何を入れたの?まあいいや。行くしかない。
「それじゃあ今度こそ行くよ!」
リゼについて、ギルドの外に出た。
「シン、地図に書き終わった?」
リゼは、出てすぐにシンに聞く。
先ほどから何か書いていると思ったら、地図だったのか。私はシンの手元をのぞいてみる。
それは国内の地図で、おそらく現在地であろう、ギルドの目の前が赤く光っていた。
また、9カ所に丸がつけてある。そこが、今日行くところだろうか。
「うん、終わったよ。ただ、範囲が広いね。さすがに1日じゃきついかな……」
と言ってシンは私を見る。
「そうだねぇ、歩きじゃあきついね。風属性を持っていて、転移魔法が使える人って……」
リゼも私を見る。
「……え、私がやるの!?」
そう言うと、リゼは喜んだように、
「そっかぁ、アミがやってくれるのか!うんうん、今日がどれほど厳しい戦いになるかわからないもんね、契約を使うと、魔力が減るし……アミは優しいねぇ」
と言った。
いや、全く言っておりませんが?
まずい、このままでは私の役目のなってしまう……。
「別に、回復薬を飲めば……」
魔力は回復する、そう言おうと思ったのに。
「アミがやってくれるんだ!ありがとねー。大丈夫、失敗することはほぼないし!この場所に転移してね。あ、手でもつなぐ?やりやすいよ」
あぁ……覆せない雰囲気。
仕方がない、やってみよう。
「はい、手をつないで」
私はふたりと手をつなぎ、不安なため魔法陣を使って転移魔法を発動した。辺りは光る。
行き先は、森の中だった。




