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「スキル????」  作者: 古来 冷翠
2.魔法学院編
53/111

53.授業の終わり

私は即座に、クナイを10本作り出し、投げる。そしてそれを先生が避けている間に私は懐へ潜り込み、9割ほどの魔力を一点集中させた炎で首元ら辺の鱗を燃やし、溶かす。さすがにここまで高火力なのであれば燃えるらしい。そして、そこを刀で突き刺す。

おそらくかかった時間にして約2秒。

甘党先生はゆっくり倒れていく。

一瞬にして圧倒的な、勝利だった。



「やるじゃん。合格」


そう言い残して、先生は寝た。




魔力はおそらくすぐに回復していたのだろう。しかし、甘党先生は動かないでいた。

聞いたら、眠いと零していた。いや、わかるけど。一応授業中に寝ないでもらっても?ただ、先生の疲れもよくわかる。昨日はたくさん動いたし、今日勝つまでに私はたくさん作戦を練ってきた。私も正直寝たい。


「先生、もう帰っていいですか?」


「ん?あぁ……ちょっと待って。今戻るから」


そう言って甘党先生は人間の姿に戻ってきた。しかし、不思議でたまらない。


「どういう仕組みなんですか?これ」


そうやって聞くと、困ったような顔をしてこう言った。


「いやぁ、僕もよくわかってなくて。院長先生が……いや、アレイスさんが調べてくれてるんだよね。僕さ、こっちの世界には一種の契約みたいなもので来てて。犠牲にしてるものは大きいけど、やっぱこっちの世界のほうが自由でよくて……何が起こってるかは僕もわかんない」


途中で言い直したな、この人……いや、ドラゴン?黒龍?

まあいいや。私の知り合いにも院長先生のと呼ばれる立場の人がいる、ということを思い出したのだろう、きっと。


「そこはまあいいや。この授業で全部クリアでしょ?」


そうだ。だから私は首を縦に振る。


「なら、アレイスさんの部屋に行こう。そして、卒業式の手続きをするよ」


卒業の……手続き?




疑問に思いながらも甘党先生の後ろをついていくと、院長室についた。最初に行った、あの部屋だ。


甘党先生は扉を開けたと思ったら、ソファに

座っているアレイスさんに向かって走り出した。


「アレイスさーん……疲れた……」


ぎょっとしながら甘党先生を見ていると、途中でドラゴンの姿になっていた。サイズはきちんと調整されていて、猫ぐらいだ。


アレイスさんは慣れているのか、膝の上にちょこんと乗せていた。


「どういう状況ですか……?」


混乱を免れられなかったのは私だけではないと信じているのだが……タウが何も言っていないのが怖い。もしかして普通なのか……?


『わぁ……後でからかってやろ』


あっ、驚きすぎて声が出てなかったタイプだ。そういうやつだ。


「それで、アミさんの用件は?」


あっ、そうだった。

何のために来たのか忘れるところだった。


「卒業の手続きに」


「あー、終わったんだ。早かったね。1属性ならわかるけど、全属性で、かぁ……。訳ありの人って何かそういうタイプの人が多いんだよね〜」


しみじみとするように言われても私には理解できないんですけど…。


「それで、手続きとは?」


私がそう促すと、アレイスさんは甘党先生を肩に乗せ、机に向かった。


「このプリントにサインしてもらうだけ。あと、ちょっとした質問だけ……」


プリント?

もらったプリントを見てみると、卒業証書のための名前がほしい、とのことだった。


「フルネームで?」


「フルネームで」


うわぁ……フルネームわかんない……。


「名前しかわかんないんですけど……」


そう言うと、アレイスさんは分厚い辞書のような物を引き出してきた。


「この中にあると思うよ……えーっと……ここか。へぇ、国営の孤児院か。アミ・フィミノアさん」


あっ、孤児院の名前か!

そこまで良い思い出のある場所ではないから嫌ではあるが、仕方がない。


私はサインを書く。アミ・フィミノア、と。

フルネームなんて初めて知った。案外使う機会なかったんだなぁと改めて思った。


「よし、じゃあこれ。招待状」


プリントと引き換えに渡されたのは、手紙。きちんと丁寧にシーリングスタンプまでしてある。豪華なやつだ。


「日にちと場所が書いてあるから。同伴者は1名までね。名前は自分で書いといて。あと、当日にこの券がいるから」


なるほど。入場券みたいなものなのか。


「わかりました」


「あとね、これはちょっとした調査だけど……」


アレイスさんはソファに座り直す。

私もソファに座り、姿勢を正す。

アレイスさんの膝の上に乗っている甘党先生は、のんびりとしている。


そんな厳格な雰囲気……厳格?いや、厳格だ、たぶん。厳格な雰囲気の中、アレイスさんは話し出す。


「卒業した後、何をする?」


未来の話だった。

ここで私が何と答えるかは、大切なのだろうか。ここで、王政派として動くと言ってもいいのだろうか。

嘘はつきたくない。だから、攻撃されるようなことになったらすぐに反撃できるよう、厳重な警戒をしつつ、話す。


「私は……スイウさんからの依頼をこなします。その後はまだ、考えていません」


そう言うと、アレイスさんはにっこりと微笑んだ。拍子抜けだ。


「そっか。そう言うと思ったけどね。こっち側に来たかったらいつでもおいで。こっちのスパイとして使うとか、いろいろ活用法はあるからね……向こうのスパイとして、じゃなかったら歓迎するよ」


否定されなくてよかった……のか……?


まあいいや。


「ありがとうございました」


「うん、元気でね」


そう言って私は部屋へ帰った。

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