40.戦闘の授業2.5
2階にのぼり、数ある練習場の中から、さっき借りていたところへと向かう。
階段から5番目の、ここだ。
私たちは練習場に入り、なんとなく対面する。
「さぁ、アミ。刀を出して」
私は言われた通り、刀を出す。
そして、クウに刃を向ける。
「闇属性、持ってるよね。模擬戦の契約、して」
あの、よく使われているやつか。
私は契約をすんなりと終え、私たちの体が淡く光った。
「じゃあ、始めるよ。感覚をつかんで」
クウは、私に何度も斬り込んでくる。
避けたり、受けたり、斬られたり。
魔法を使って回復する暇などなかった。
「少し攻撃を弱める。アミ、私に攻撃してみて」
クウが言った通り、直後に攻撃の回数が減った。これなら、少しは攻撃に転じられる。
私は、クウの急所を狙い、攻撃をする。
心臓や首など、人間としての急所。
腕や足など、戦う者としての急所。
しかしそのほとんどはクウの刀によって封じられる。というか、それの向きを変えて攻撃にまで持ってくる。これが経験者か。
「アミ、私がやってるようにできるまで、何度も試してみて」
クウの攻撃の回数が増える。自然と、守りに転じた。しかし私は、クウがさっきまでしていたカウンターの動きをきちんと見ていた。何回も試していれば、いずれできるようになる……といいなと思っている。
だから、ひたすらに攻撃を受け、それの向きを変化させようと努力し、さらにはそれが相手への攻撃とできるように、できるだけの技術を、魔法なしで頑張った。
しかし、努力は実らなかった。
「2時間経ちましたよ。別館の1階以外は閉めるので出ていってください。売店ならもうちょっとやってます」
さっきの事務員さんが、入ってきた。
私は、気が抜けて倒れていた。
「はぁっ………はぁ……っくぅ……できな……かった……ぅぁ……」
息はが上がりきって、しばらく落ち着きそうにもない。体の全身が痛んでいた。クウは急所を狙ってきていなかったようで、契約が執行されることはなかった。
「アミ、体力つけたほうがいいよ。戦いになったら、2時間打ちっぱなしとか全然あり得るから。毎日走る?」
「そ……れも……ありかも……」
思考に霧がかかっている。疲れた。
『また無茶をして……ご自身の限界くらい、ご存知でしょうに……』
うるさい……。疲れた。
「クウさん、彼女を背負ってでも何でもいいので、1階に行ってください。閉めます」
「無慈悲だな…」
「時間を見ていなかったあなたがわるい、クウさん」
クウは無駄口を叩きながらも、私の方へやってきて、手を貸してくれた。
「お姫様抱っこでもいい?」
「重い……よ…?」
「それは肯定だ」
そう言ってクウは、軽々と私を持ち上げた。
疲れ切っていて力も入っていないからとても重いはずなのに。ただ、階段を降りていく間も、何も話すことはできなかった。
息が上がりすぎて。
「はい、氷。甘いから美味しいと思う」
私を椅子に座らせ、しばらくいなくなったと思ったクウは、氷菓子を買ってきていたようだった。ついでに、冷たい水も買ってきたよう。
「ありがと……たしかに甘い」
「これはね、異世界から伝わった、かき氷ってやつなんだ。知ってた?」
「名前だけ。食べたことはなかった」
タウが言っていたから、だけど。
「そっか。……だいぶ回復したようでよかった。もう少し休憩したら、部屋に帰ろう。もうこんなに暗い時間だ」
そう言われて外を覗くと、辺りは一面、真っ暗だった。夜が深い。
「そうだね……うん、美味しかった。帰ろう」
「事務員さんに、魔法陣もらってくるよ」
クウは、しれっとかき氷のゴミと、水の入っていたコップを持って、事務室へと入っていった。そして数分後、魔法陣の描かれているであろう紙を持って帰ってきた。
そして私たちは別館を後にした。




