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4.コンパス

シンの放った言葉はよくわかんないや。


「ところで君たち、少しいいかい?」


咳払いをしてから、スイウが話し出した。


「アミ以外にはさっき少し話したんだけど、もう一回話すね。この、コンパスについて」


そう言ってスイウはコンパス…方位磁針を取り出した。


「このコンパスはね、君たちが行くべき方向を教えてくれるんだ。さっき質問されたから先に言っておくと、誰もここに行ったことはないよ。なんせ、この道具の発動条件がね、スキル持ち3人が揃っていることなんだ。そこまでが求められるってことは、かなり危険なものだと思う」


危険な旅路にわざわざ首を突っ込む意味がわからないが、多数決で負けたんだ。行くしかない。


「まあ、死なないように頑張りなよ」


そう言ってコンパスと数枚の金貨を置いて、スイウは去っていった。




最初に沈黙を破ったのは、シンだった、


「とりあえず、向かってみない?」


たしかに行ってみたい。

私とリゼは、同時に首を縦に振った。



結局、私がコンパスを持って行くことになった。

3人揃って、ギルドの外に出る。

青空の下、レンガみたいな道が通っている。

私の気分はとても明るい。


「あぁ、外の光って眩しいね〜」


そう言い終わり、コンパスの指す向きを確認しようとした、次の瞬間だった。


コンパスが、手の上から消えた。

正しくは、盗まれた。


「えっ、何事!?」


「リゼ、転移された!追うぞ!」


シンは急ぎで命令する。


「了解!魔力の動きからあの方向だと…王政派の館?」


そんなことを言って走って行ってしまった。

よって、私は置いてけぼりだ。どうしようかな。

そう思った、その後だった。



『〈スキル????〉』


私の意識が消えた。









「久しぶりだな」


鎖は…そのままか。

俺は、自分の左腕を見て確認する。

いろいろ気になる。

髪色は…白か。アミの茶色から変わっている。

また、体のつくりは昔と同じ…男だな。アミの、女の体だったらどうしようかと思っていたが…。

問題はなさそうだ。身長も変わっていないな。

原理が謎すぎる。

でもおそらく、今回の入れ替わりはアミの適応が追いついていないだけ。

時間は2分ほど。今回だけ可能な手法だ。

それだとしても、この、生きている感覚がある。そのことだけが今の楽しみだ。

それだけを楽しんでいようじゃないか。


「とりあえず、俺の計画を邪魔するやつは、殺す」


さっきのやつらの魔力を感じる方向に、身体強化をしつつ走る。


途中で、


「あれ…アミ?」


「まさか…タウか?」


と聞こえた気がしたが、気のせいだろう。




…ここか。

10秒足らずでたどり着いたのは、大きな森。

その中にある木造で結構広い、横長な屋敷に、あいつがいた。


「探すのも面倒だな…燃やそう」


コンパスは耐熱性だったはずだ。

まあ、燃えたとしても作り直せばいい。


「〈炎火〉」


短縮詠唱をする。その途端、屋敷が炎に包まれる。


「まさに絶景ってやつだな」


その上、魔法も問題なく使えることがわかった。


…あと90秒ほどだな。


「タウ…?」


俺に話しかけてきたのは、見覚えしかない、俺の片割れ。


「シンか。まだ生きていたとはな」


最大の皮肉を込めて言ったつもりだったが、


「まあね」


と軽くかわされた。俺がいなかった長い間に取得したのだろうか。

まあ、そんなのはどうでもいい。


「俺には時間がない。あと80秒といったところだな」


「それじゃあ、契約だ」


闇属性魔法、契約の使用ということか。

シンは、こう続けた。


「僕が作ったこの髪飾り」


そう言って取り出したのは、さっき作っていたガラス細工の花形の髪飾り。

下の方にはしずくのようなものまでついている。


「この髪飾りで合図する。僕がこの髪飾りを外す、または溶かしたときなら、タウが出てきてもいい。ただ、情報を話してくれ。僕らの質問…10個に答えてくれ」


なるほど。そう来るか。


「対価は?」


俺はすでに灰となった屋敷の中にあるであろうコンパスを拾いに行きながら、問う。

契約なんだ。対価が必要になる。


「黒龍討伐。何を企んでいるのかは知らないけど、魔王からの依頼ってことは、タウからだろ?それを成し遂げる。それで十分でしょ」


たしかにそうだ。そうなのだが、少なすぎる。


「俺が入れ替われることを、アミには言うな。それと、帰ってきたらなんでも、という報酬。あれの排除。それなら契約成立だ」


やっと探していたコンパスを見つけた。

スイウから渡されたものに違いはないのだが、俺の作ったやつじゃないな。

何か企みがあるのか…。まあ、まだ大丈夫だろう。


「それならいっか」


シンは無詠唱で俺と契約をした。俺らが黒く、淡く光る。

やるべきことも終わった。もう帰ろう。


「それじゃあ、また今度」


コンパスをシンに手渡ししながら言った。


「今度、僕は何て言えばいいんだよ…」


俺が最後に聞いたのは、そんなポツリとしたシンの声だった。

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