3.ショッピング
とりあえず、リゼに連れられてギルドの外に出た。
そして、北の方向に向かって歩いて行く。
「ねぇ、アミ。いいんだよ?敬語なんて使わなくて」
そう言われても、癖が抜けるまでは仕方がない。
「ちょっと待ってて。初対面の人にはいつもこんな感じなので…」
「そっかぁ」
それっきり、会話が途切れる。
なんとか…話を…。
「アミ、どんな感じ服がほしい?」
リゼが話題を振ってくれた。ほんと助かる。
でも、私には服のジャンルなんてわからない。
『タウ、どんな服がいいと思う?』
困った時は、全部任せればいい。
『はぁ!?俺なのかよ…。あぁ…魔術師とかどうだ?』
なるほど。いいかも。
「魔術師っぽいやつで」
「OK、わかった!そうなると、マントとかかなぁ…。うん。中の服は私のでもいい?白のシャツと黒のズボンとか良さそうだと思うんだけど…」
もちろん。どこに異議があろうか。
私は無言で首を縦に振った。
「それじゃあ、式神、任せた!」
そう言ってリゼは、人型の白い紙を取り出す。
そして、風に乗せて飛ばした。
「今のは…?」
思わずつぶやく。
「私のスキルで、分身みたいなものだね」
それから一息ついて、
「まあ、それまた今度!」
さらにもう一歩きし、王城の近くの、商店街のようなところに来た。
リゼは店を見ながら、歩いて行く。
私は、人混みに負けないようについて行くだけで精一杯だ。
「うーん、こことかいいんじゃない?」
リゼが立ち止まったのは、いかにも服屋という感じの、木造の建物の前。
カランコロン、と鈴のいい音を鳴り響かせながら、私たちは店に入る。
「いらっしゃいませ。仕立てですか?それとも既製品で?」
「あー、とりあえず既製品で」
なんて会話をリゼと店員さんはしていたが、私の耳には入っていなかった。
それよりも、魅力的なものに目を奪われていた。
それは、入ってすぐ右手の棚にかけてあった。
「これは…!」
黒色のフード付きのマント。それに、銀色の糸での刺繍が施されている。
おしゃれ、という感想よりも先に、これだ、という確信のような何かを感じた。
「リゼ、これがいい!」
リゼと店員さんは、こちらを向いた。
「うーん、まあちょっと曰く付きだけどいっか。よし、これで」
すると、店員さんは首を少し傾けて、笑顔で言った。
「ありがとうございます。正直、溢れ出る魔力が強すぎて買い手がいなかったので…」
魔力?そんなのあるかな?…いっか。
「それでは、あちらでお会計を」
「じゃあ、アミは先に外行ってて」
そう言ってリゼと店員さんは奥の会計場に行った。
外に行けと言われたので、素直に外に行き、少し待つ。
そして、会計を終えたらしいリゼがやってきた。
「終わったよ〜!私が持ってくから、帰ろっか」
私たちはギルドまで、先ほどと同じように歩いて帰った。
でも、さっきより雰囲気はよくなったと思う。よかった。
あの部屋まで帰ってきた。
シンはまだ、同じソファーに座っていた。手にはガラス細工のようなものがあった。
「おかえり。ちょっと髪飾りは間に合わなくって…。もうちょっと待っててね」
ガラス細工を私たちに見せながら、シンが言う。
マジで作ってたんだ。すごいなぁ。
「あ、リゼ。そういえば、式神が服届けてくれたけど…」
そう言ってシンは机に視線を向ける。
そこには、綺麗に畳まれた白のシャツと黒のズボンがあった。
「ありがとね〜。アミ、買ったのもここに置いとくから、着替えてみてよ」
リゼがさっきのマントを置く。
「じゃあ、一旦隣の…スイウのいる部屋に行こっか。10分くらい」
シンがリゼを連れて、外に出ていった。
そんなにかからないと思うんだけどなぁ…。
じゃあ、着替えるか。あっ、そうじゃん。
『タウもどっか行ってね』
流石にわかってるだろうけど、念のためだ。
約8分後。思ったよりも時間がかかった。
髪型とかもいじろうと思うと、ちょっとね。
私は、部屋にある鏡を見て、満足する。
白のシャツに黒のズボン。
その上に着た、黒のマント。頭の左側に少し編んだ三つ編み。
うん。いい感じじゃない?
『タウ、どうかな?』
『ん?あぁ、終わったのか。そうだな……いいと思う』
よし、タウのOKがもらえた。
多分この反応は、いい方だろう。なら、大丈夫だ。
少し待っていたら、扉が開いた。10分経ったのだろうか。
「アミ、終わった?……うん。いいじゃん」
リゼが、扉からひょこっと顔を出して確認する。
そして、シンとスイウも後から入ってくる。
「……!アミ、似合ってる」
シンは、相好を崩して笑った。
「シンにここまで言わせるとは…アミ、やるじゃん!」
リゼに言われるが、レアだったのか、これという感じだ。
「ねぇ、僕だいぶお金払わされたんだけど。少しくらい感謝あってもよくない…?」
スイウが、少しすねたように言う。やっぱりリゼが請求してたんだ。
「ありがとうございますね、スイウさん」
「アミ、そのマントってどこで…」
シンに聞かれる。だが、
「服屋で買ったけど…」
と答えるしかない。
「そうか…。調べを入れておくか…いや、わかるわけない、か…?」
シンが後で、呟いていた。