2.スキル持ち
言われたことの意味がわからずに、戸惑う。
スイウさんを見ても、私を琥珀色の瞳で見つめて首を傾げ、美しいほどのミント色の髪が服にかかるだけだ。
そしてついに、言葉にして吐き出すことができた。
「説明してください!意味がわかりません!」
ほんと、いきなり特別だって言われても意味わかんないから!説明が少なすぎる。
「うーん、さっき見たスクリーン。あれにスキルって書いてあったでしょ?」
『あったっけ』
『あったぞ』
あったらしい。
「うん。それが特別なんだ。ここの2人も同じくスキルを持ってる」
そう言ってスイウは横に座っていた2人を見る。
「はじめまして。シンっていいます」
まず、銀髪に青い目をした青年。
白のカッターシャツに濃い緑の膝丈のズボンを履いている。
その子が丁寧そうに自己紹介をした。
「うっす。リゼっていいます!よろ〜」
次に金髪に茶色の目をした成人済み…15歳よりは上のお姉さん。
薄くピンクがかったカッターシャツと、ベージュのスカートを着ている子。
その子が挨拶をした。
こう来たら、私も挨拶するしかないだろう。
「アミです。よろしくお願いします」
変に思われなかっただろうか、大丈夫だろうか。
それはさておき、無事に自己紹介は終わった。
その少し後に、スイウが説明を加える。
「2人はそれぞれ、不老不死、情報解析のスキル持ち。そして、アミ。君はスキル????のスキル持ち。スキルっていうのは、この3つしか存在しないんだよ」
へぇ…。初めて知った。
「それで、僕から君たち、スキル持ちへのお願いがある」
「なにそれ!私も聞いてないんだけど!」
リゼが言う。そして、
「まあまあ、とりあえず聞こうよ」
シンがとりなしていた。
なんか、仲が良さそうだ。私はこの輪に入れるだろうか。
「聞いてくれると助かるよ。君たちにしてほしいこと。それはね、黒龍討伐だ」
聞いてすぐさま、シンが問う。
「黒龍って、ドラゴンってことでいいんだよね」
「もちろん」
「ならなおさら、ただでできるようなことじゃないでしょ。しかも、わざわざスキル持ちを集めるまでしてる。
なんでこの依頼を持ってきたのか。その説明くらいしてくれるよね?」
シンが言うことは、お願いという形だが、ほぼ強制だった。
「うーん、とあるお方からの依頼なんだよね。異世界…ではないんだけど、謎空間が存在するんだ。異世界からこっちの世界に来て、その後その謎空間に紛れ込んじゃった黒龍の討伐」
『なんか、壮大な人生…いや、龍生を過ごしてそう』
「誰からの依頼なの?」
リゼが問う。
「いずれわかると思うよ…」
「私は今知りたいの!」
たしかに。私も知りたい。きっと知らない人だろうけど。
迷うようにしてから、スイウは言った。
「魔王様からの依頼だ」
…なんだろ。わからないはずはないのに、思考回路に靄がかかったように気が付けなくなった。
「僕も、さすがにただでとは言わない。黒龍討伐後、全員で王城にまで帰って来れたら各々ひとつ願いを叶えてあげる。これでどう?」
「「やります!」」
シンも、リゼも答えた。
「え、拒否権ない…?」
私は思わず呟く。
「そうだよ〜多数決だもん!」
命がかかってる感じの話だったのに、リゼはものすごく軽く答えた。
まあ、仕事探しという面では成功とも言えるし、いっか。
スイウは、少し羨ましそうに微笑みながら、
「まあ、ごゆっくりと。僕は隣の部屋にいるから」
そう言って部屋から出ていった。
その少し後に、シンが言った。
「とりあえず、アミの服をなんとかしよっか」
そこで私は、孤児院から出てきて服も買っていなかったことに気がついた。
たしかに、長い間着てたから買い替えた方がいい感じだ。
気にすることがなかったから、すっかり忘れていた。
「じゃあ、私が一緒に買いに行く!お金もあるし!」
リゼが提案する。
「それなら僕は…」
「シンはここで待ってて!式神に服を届けさせるから!」
即答された。
シンは少ししょぼんとして、
「わかった。じゃあ髪飾り作って待ってる」
おぉ、なかなかハイスペックな人だ。
「アミ、どんな服がほしい?というか、とりあえず服だけでいい?」
リゼに問われる。
服を買ってくるだけでもお金が足りるかわからないのに、それ以外だなんて…。
「お金ないから無理です…」
そう言うと、シンが、
「いいよ。お金なら僕がいくらでも出せるし、スイウに出させてもいい。ほしいものは買ってきな」
かっこいいな、シン。でもなおさらという感じだ。
「他のものはまた今度でいいです…。お言葉に甘えて、服だけ」
と私は答えた。
「えー、いいんだよ?せっかくシンが出してくれるんだから…」
リゼはそう言うけど、お金は大事なのだ。
『そうだそうだ。シンの財産なんて枯らしても大丈夫だ』
いや、大丈夫じゃないでしょ…。タウまで何を言い出すのか。
「いいんです!よし、行きますよ!」
話が変な方向に進みそうだったため、強引に終わらせて行くことにしていた。